「ウクライナのジェノサイド」は真実なのか
NATO諸国にとって、プーチン大統領は「悪の権化」にほかなりません。
実際、バイデン大統領は「ロシアは死と破滅の責任がある」と、強い表現で批判しています。
しかし、単に「悪者」と見ているだけでは、プーチン大統領の「狙い」を読み解くことは不可能です。
やはりロシア側の言い分についても、冷静に見ていく必要があります。
2月16日、ロシアは国連に対して「ウクライナ当局が住民を大量虐殺している」とする報告書を提出したと報じられています。
報告書によると「2014年以降、ウクライナ軍が学校や病院などを爆撃し、数千人が死傷した」とされています。
またロシア・タス通信は15日、ウクライナ東部の状況を「ジェノサイド(集団虐殺)」とするプーチン大統領の見解を報じています。
この報告については、17日の国連安保理の会合において、アメリカのブリンケン国務長官が「ロシアが侵攻に向けた口実づくりをしている」と批判しています。
「西側の価値観」だけでは正しく理解できない
もちろん、ロシア側のでっち上げである可能性はあります。
ただ、現時点ではそう断言し得る証拠もありません。
もし本当にジェノサイドが発生しているなら、ロシアの行動は正当化されるでしょう。
その場合、プーチン大統領の決断と行動は英雄視されても不思議ではありません。
実際、プーチン大統領はドンバス地域への軍事行動を「平和維持活動」と表現しています。
その表現の根拠は、報告書にある「ウクライナにおけるジェノサイド」なのだと思われます。
本当にジェノサイドがあるのかどうか、いまのところ断定はできません。
ただ、「西側の価値観」だけでなく、「ロシアの価値観」についても、知っておくことが重要です。
日本を含む欧米のメディアでは、プーチン大統領を悪魔と同一視したり、現代版ヒットラーとして揶揄しています。
ただそればかりでは、複雑に進行するウクライナ危機を、正確に理解することはできないでしょう。