融資や個人の格付けもスマホで完結する中国

しかし、BaaSはそうした銀行の業態や常識、概念を崩している。BaaSは黒子として銀行の機能を提供し、基本的には目に見えない。顧客は提携先企業、あるいは合弁企業のブランドとして銀行サービスを利用する。サービスはデジタル空間で完結する。物理的な銀行の店舗や装置がなくても、より効率的にサービスを利用できる時代が到来している。信用審査も人工知能を用いてビッグデータを分析することによって行われるケースが増えている。

海外ではわが国と比べものにならないほどにBaaSが社会に浸透している。中国ではアリババやテンセントがスマホのアプリにSNSや電子商取引(EC)に加えて、資金の決済や運用、個人の信用力評価(格付け)、融資などを行う生活に不可欠なアプリを提供している。

2018年の世界銀行の報告によると世界で銀行口座を持たない成人の数は約17億人だ。そのうち3分の2の人がSNSなどにアクセスできるスマートフォンなどのデバイスを使っている。物理的な銀行がなくてもそのサービスを利用できる環境が増えている。住信SBIのBaaS事業の強化は、わが国の銀行の概念、姿かたちを激変させる一つのきっかけだ。

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「銀行がなくなる日」が本当に到来しつつある

今後、わが国では銀行から非銀行へとその役割が加速度的に溶け出していく。店舗やATM網を必要としないBaaSのコスト構造は既存の銀行と大きく異なる。その分、BaaS企業はソフトウェア開発や信頼性の高いシステム構築に経営資源を配分できる。

それに加えて、オープンAPIを経由してBaaSプラットフォーマーと提携先の企業が協働することによって、新しい金融サービスや商品などが生み出される可能性も高まる。BaaSは経済運営の効率性向上に貢献するだろう。少子化、高齢化、人口減少によって銀行は地方の支店を閉鎖している。

その一方で、BaaSではスマホを通して銀行が最終顧客の所にやってくる。店舗が閉鎖された地域に住む人々にとってBaaSの存在意義は増すだろう。わが国におけるBaaSの成長期待は高い。2018年に施行された改正銀行法が銀行にオープンAPI導入に関する努力義務を課したのはその裏返しと言える。

大手行を中心にわが国の銀行の存在意義は急速に縮小するだろう。銀行がなくなる日が本当に到来しつつある。各行は、生き残りをかけてとにかく新しい、柔軟な発想を増やし、実現しようとしなければならない。従来の企業同士のつながりを超えた地方銀行の経営統合や大手金融グループとの資本業務提携は急速に増えるだろう。過剰になった人員、店舗、システムなどのリストラも加速する。