労働生産性の低下も深刻

地球温暖化は労働生産性を低下させることも指摘されています。

農業や建築業など屋外で働く仕事では、気温が大幅に上昇すれば、クールダウンや休憩のために、多くの時間を割く必要がでてきます。ILOは熱ストレスにより、2030年までに世界の労働時間は2.2%失われ、8000万人のフルタイム雇用に相当する生産性が低下すると予想しています。

特に影響を受けるのが農業と建築業であり、2030年には熱ストレスにより農業の労働量の6割、建築業の2割弱が失わると試算されています。他に労働力が失われるリスクが高いものとして、環境サービス、救急・消防、輸送、観光などがあげられています。

ただし、この予想は、気温上昇が今世紀末までに産業化以前と比べ1.5℃に抑えられることに成功することを前提にしており、気温上昇がさらに進んだ場合には、それよりもはるかに高い労働生産性の低下が予想されます。なお、地球温暖化とならび、地球環境や健康に悪影響を及ぼす大気汚染も労働生産性に影響を与えることが知られています。

先進国に比べて劣る日本の「炭素生産性」

もっとも、脱炭素化を進めることで、労働生産性が高まることも期待されます。「炭素生産性」という概念があります。これは、GDPをCO2で割ったもので、同量のCO2排出で、どれだけのGDPを産出することができるのかを測る指標です。

図表1はOECD諸国における炭素生産性の変化率と労働生産性の変化率の関係を示したものです。両者の間には正の関係があることがわかります。日本は他の先進国と比べて炭素生産性が低いため、今後、脱炭素化が進むことで、労働生産性が向上する可能性があります。

出典=宮本弘曉『101のデータで読む日本の未来