人にまつわる認知、課題を理解する認知、工夫を生む認知

さて、メタ認知という言葉を使い始めたフレイヴェルは、もともとメタ認知的知識を大きく、次の3つに分けました。

・「人変数」に関する知識
・「課題変数」に関する知識
・「方略変数」に関する知識

これらをわかりやすく言うと、メタ認知的知識は次の3つの要素に分かれるということです。

(1)人間の認知特性についての知識
(2)課題についての知識
(3)課題解決の方略についての知識

これら3つのメタ認知的知識については、例を見ていくとわかりやすいでしょう。

(1)人間の認知特性についての知識

人間の認知特性についての知識とは、私たちの一般的な認知の特性についての知識です。たとえば、「一度に多くのことを言われても覚えられない」「難しい文章でも、何度か読むと理解しやすくなる」などがこれに該当します。驚くべき記憶力の持ち主など、例外的な人もいますが、多くの人に当てはまるのが、この人間の認知特性についての知識です。他には、「思考は感情に左右されやすい」といった知識もその例と言えます。

まず「何を要求しているのか」を理解する

(2)課題についての知識

課題についての知識は、「複雑な計算は、単純な計算よりもまちがえやすい」「討論では、雑談の時よりもわかりやすく丁寧に発言する必要がある」といった、課題の性質に関する知識を指します。レポートや論文を執筆する際にも、字数制限に応じてまとめ方を変える必要があるという知識が、これに当たります。

その課題が何を要求しているのか、その課題の本質は何なのかを知っていれば、課題に対して適切な対応をとることが容易になります。

(3)課題解決の方略についての知識

課題解決の方略についての知識は、「うっかりミスを防ぐには、何度も見直しをすることが役立つ」「ある事柄についての思考を深めるには、文章や図で表してみるとよい」といった方略、つまり課題をよりよく遂行するための工夫に関する知識を指します。課題解決の方略についての知識を豊富に持ち、これを実際に活用することによって、課題遂行のレベルを上げることができます。

出典=『メタ認知

(1)と(2)を経由しなければ(3)は使いこなせない

ここで強調しておきたいのは、人間の認知特性についての知識および課題についての知識を持っていてこそ、課題解決の方略についての知識が活かされるという点です。と言うのも、人間、とりわけ自分の認知特性や課題の本質を理解していなければ、方略だけを手っ取り早く覚えたとしても、それは「小手先の知識」でしかなく、実際にはそれほど役に立たないからです。つまり、「なぜその方略が有効なのか」を十分に理解してこそ、必要な場面で役立つ方略を自ら選び出し、有効活用することが可能になるのです。