合気道以外の世界で見た「道場同士の仲の悪さ」

【内田】それは武道でも同じなんです。優劣を競い合うことが最優先されると、いつの間にか他人の欠点ばかり見るようになる。僕は15年間多田宏先生の下で合気道を稽古した後に、就職して東京を離れて、多田先生に就いて定期的に稽古することができなくなったので、先生のお許しを得て、いくつか他芸を稽古することにしたんです。どれも試合のある武道でした。でも、習い始めて合気道との違いにびっくりした。

【岩田】何があったんですか?

【内田】道場同士の仲が悪いんです(笑)。同じ道場の門人同士はそれなりに仲がいいんですけれど、他の道場とは折り合いが悪い。師範同士が陰に回って悪口を言ったり、時には人前で怒鳴り合ったりする。そんなの合気道の世界ではついぞ見たことのない光景でしたから。

【岩田】へぇ〜。

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勝敗を決めるために「悪いところ」を探す

【内田】どうしてこんなに仲が悪いんだろうと考えたんですけれども、それはたぶん試合があるからなんだと思う。僕が稽古していたのは2つとも審判の前で型を披露して、その評点で勝ち負けを競うタイプの武道だったんですけれども、そういう技術の巧拙って、かなりの程度まで審判の主観なんですよね。

【岩田】主観、かあ。

【内田】技量に天と地ほどの差があれば、主観の入る余地はありませんけれども、同じ段位で、同じくらいの経験の人たちが並んで同じ型を演じるんですから、それほど決定的な違いは出ない。それでも勝敗を決しなければいけない。だから、どうしても見方が減点法になる。審判も必死になって演武者の「悪いところ」を探そうとする。どうしても技を見る目が査定的になってしまう。「目付が悪い」「体軸がぶれた」「腰がふらついた」というようなことを仔細にチェックする。