住宅ローンや教育ローンのボーナス払いが許されなくなった

実はこの頃に③のボーナスの考え方も大きく変わった。以前はボーナスといえば給与の5カ月分が相場であり、サラリーマンの年収は月給の17カ月分と言われた。外国人がボーナスを「13カ月目の給与」と呼ぶほど固定されていた。ところが、前出の奥田氏の「業績がよければ一時金で報いればよい」という発言に象徴されるように、ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく。

その典型が鉄鋼業界の労使で締結した会社の業績でボーナスが変動する「業績連動型賞与」だった。電機業界など他の業界にも広まるようになり、多くのサラリーマンにとってはボーナスを当てにした住宅ローンや教育ローンを組むことが許されなくなった。

実はこうした給与・ボーナス改革は目先の業績不振を回避するだけではなく、すでに今日に至る社員の高齢化も視野に入っていた。2002年から始まった「いざなぎ超え」と呼ばれる景気回復期に賃金制度を改革した大手エンジニアリング会社の人事部長はこう語っていた。

「社員は高齢化していくので、年功賃金制度の下では確実に人件費が増えていく。まずは年功賃金をなくし、ボーナスも業績に連動した形にすれば、将来的に人件費を抑えることができる。社員や労働組合には言えないが、賃金制度設計段階で5年後に1割、10年後に2割の人件費削減効果があることを経営トップに報告し、了承を得たうえで導入している」

賃金制度改革によって人件費が削られていけば、当然、給与が上がるはずもない。また給与以前に④の交際費・接待費は真っ先に削られ、現在でもかつてのように飲み食いに使える交際費は復活していない。

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食品会社の人事部長は昔の交際費についてこう振り返る。

「かつての交際費は目的外利用の社内消費が相当の比率を占めていた。部下をちょっと高い店に飲みに連れて行き、翌朝、社員から『部長、昨日はありがとうございました』とお礼を言われたものだが、部長自身も会社のカネでただ酒を飲んでいた。今は交際費が減って、部下との打ち上げも割り勘に上乗せする程度で管理職としてのうま味も威厳もなくなった」

交際費を自由に使えることがなくなって久しく、今では少ない交際費をどう使えばよいのかおカネの使い方も知らない管理職もいるという。