「8050問題」を深刻化させる「寝たきり大黒柱」

「寝たきり大黒柱」という医療関係者の俗語がある。現在、日本の社会保障制度では、医療費の自己負担額には上限があり、高齢者ほど公費負担割合が大きい。そのため、年金支給額から、老親の医療費を差し引いても毎月それなりの額が残ることもある。

これを目当てに、家族が寝たきり老人に対して際限なく延命治療をリクエストするケースは少なくない。それは、愛する親を死なせたくないという気持ちゆえの「懇願」であることもあるが、「金目当て」と感じる医療者も多い。

「容疑者の92歳の母親は数年前から訪問診療を受けていたが、栄養をチューブで送る『胃ろう』を在宅で受けられないことに不満を抱いていた」と報道されている。

もし、容疑者が「無職ひきこもり息子」ならば万策を尽くして親の延命(と年金維持)を要求したのではないか、との推測はできる。だが、90代の人間を際限なく生かし続けることは不可能だ。

すべてのひきこもりの人が悪だくみをしているわけではない。精神的な病などで外に出ることができない人もいる。ただ、年金制度と高齢者療養費制度を“悪用”して、自らは働かず「寝たきりの大黒柱」の収入で食いつなぐ人がいるという現状は、早急に対処すべきだろう。

具体的には、年金受給者や生活保護受給者が入院した際には、年金を本人名義の通帳に支給するのを停止する、といった策が考えられる。入院費やオムツ代など介護にかかる経費は、公費から直接病院に払えばよいのだ。「マイナンバー制度」を活用すればこうした仕組みを運用するのは可能と思われ、コロナ禍でさらに膨れ上がった社会保障費の軽減にも有用だろう。

要介護状態になった親の世話をしたい(もしくはせざるを得ない)と、介護離職を決断する息子・娘もおり(自らの貯金や年金もある)、ケアする側の人がすべて、親を「寝たきり大黒柱」にしているわけではない。

しかし、今回の事件を見ると、「寝たきり大黒柱」を回避できるよう「ひきこもり」が長期化する前に外で働けるような働きかけや社会保障改革の必要性がより高まった。こうした対策を打つことで「8050問題」を「7040問題」に軽減できる可能性もあり、子世代の健全な自立を促し、「胃ろうを実施しない医師を逆恨みして射殺」のような不幸な事件を減らせると、私は考えている。

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