すでに「日ハムの監督に」と打診があったとしたら

引退してから14年もたつ48歳だが、容貌(整形したと公表)も肉体もそれほど衰えのないカッコいい姿を見せ、ヒットさえ打ってみせたが、どこの球団からも声はかからなかった(新庄は視力の衰えに悩んでいた。バッティングセンターで120kmのボールが150kmに見えた。そこでぼんやり見えるかたまりのどのあたりを打てば芯を捉えられるかという練習をしたという)。

やはりムリだったか。多くの野球ファンはそう思った。だが、もしその時すでに日ハムの監督にという打診があったとしたら、このパフォーマンスはまったく違って見えてくる。いくらなんでも、10年以上野球界から離れていた人間を、いきなり監督に据えるというのでは、「客寄せパンダ」と厳しく批判されただろう。

そこで、肉体的にも容姿も衰えていない新庄の姿を日本の野球ファンにアピールし、新庄はまだまだやれる、監督というのは面白いかもしれないと思わせるためのパフォーマンスではなかったのか。

新庄の阪神時代に監督だった名将・野村克也は、新庄について後にこういったという。

「新庄にもっと頭を使う習慣があったら、長嶋を超える最強の選手になっていたかもしれない」

だが、彼の『もう一度、プロ野球選手になる』(ポプラ社)を読むと、彼はすべてを想定しながらやっていたようで、頭は常にフル回転させていたようである。

新庄は、その野村の采配を徹底的に研究し、野村のID野球を目指しているという。

写真=iStock.com/fstop123
※写真はイメージです

「その仕事ぶりは100点満点に近い」

陰と陽、まったく違うように見えるが、ここまでのところメディアの新庄監督に対する評価は、びっくりするほどいい。

朝日新聞の記者歴30年の畑中謙一郎は、長くプロ野球から離れていた新庄に監督が務まるのかと、当然の疑問を抱いていた。

解説もコーチ経験もない人間を監督にする「ぶっ飛んだ球団」(新庄)だが、新庄を間近で見ていると、

「その仕事ぶりは100点満点に近い。新庄監督は11月8日から沖縄・国頭村での秋季キャンプを視察した。走る、投げるという基本動作をじっくり見極める練習を次から次へとやらせた。(中略)『選手の名前は覚えていない。情が入ってしまうから。スタートラインはみんな一緒。プレーではい上がってこい』『大事なのはグラウンドに立つ前の準備。人が寝ている間に練習すればいいだけのこと』」