走塁に関しては、今年は合格点だった

一方、タイガースの大きな躍進の要因は、「走る力」が他5球団よりもまさっていたことだ。チーム盗塁はダントツの114で、3年連続でリーグ最多をマークした。

一番・近本の24盗塁、二番・中野の30盗塁はもちろん、四番の大山も2盗塁ながら、一塁までの全力疾走は見事だった。

前の塁を狙う姿勢は、チームに積極性という波及効果をもたらす。優勝すれば、走力はいちばんの勝因となるはずだった。この姿勢は2022年以降も持ち続けてほしい。

阪神甲子園球場レフト外野スタンド(2019年9月22日、阪神タイガースvs横浜DeNAベイスターズ)(写真=Kst01/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

阪神V逸の原因は大山にある

そして、もうひとつ。阪神V逸の原因は、四番打者の座を任された大山が、シーズンを通してきちんと四番を守り切れなかったことにある。

四番打者がある程度固定されて1年間戦えれば、前後のバッターが非常に楽になる。勝てない責任は、やはり四番にあると思う。

大山は僕が阪神二軍監督を務めていた2016年、ドラフト1位で入団してきた選手だ。

中央球界では無名だった大山の名前が読み上げられた瞬間、ドラフト会場内で響き渡った阪神ファンの悲鳴とも嘆息ともつかない反応。大山は述懐した。

「悔しかった。一生忘れられない。声をあげた全員を後悔させてやる!」

その気概を持ち続ければ、大山はきっと這い上がれる。だからあえて厳しいことを言わせてもらう。

2021年は勝つにしても負けるにしても大山が背負わなければならないシーズンだった。大山の印象深い一打は9月4日に巨人のビエイラから放ったサヨナラ逆転2ランだけだ。

10月18日、2-1で辛勝した広島戦、四番で4打数4三振。翌19日、大勝したヤクルト戦ではスターティングメンバーから外された。勝つにしても負けるにしても、これでは大山がチームを背負っていない。