産経社説は「自民党総裁選などで岸田首相は人権問題重視の姿勢を示してきた。『(中国に)言うべきことは言う』とも述べてきた。それを果たすときである」とも指摘し、最後にこう主張する。

「真の国益には、人権が守られた国際社会の実現が含まれると肝に銘じてほしい。それを追求できないなら、民主国家のリーダーにふさわしくないと知るべきだ」

保守の産経社説に「民主国家のリーダーにふさわしくない」とまで強調されれば、岸田首相も旗幟を鮮明にせざるを得ないだろう。

読売社説は中国に「真摯な受け止め」と「不信の払拭」を期待

12月8日付の読売新聞の社説は「中国の深刻な人権侵害が一向に止まらないことに対する強い批判の表れだと言える。中国は真摯に受け止め、不信の払拭に努めるべきだ」と書き出す。見出しも「五輪ボイコット 不信の払拭は中国の責任だ」である。

読売社説は中国に「真摯な受け止め」と「不信の払拭」を期待しているが、手ぬるい。中国・習近平政権は自らの行動だけを是とし、歯向かう者を非とする強硬姿勢を貫いている。そんな習近平政権に対し、真っ当な批判や要求は通じない。中国当局は日本の新聞の社説にこと細かに目を通している。産経社説のように「全く反省していない」と強く訴えるべきである。

読売社説は指摘する。

「中国は強く反発し、対抗措置をとる構えを示している。北京五輪に各国の首脳や閣僚らを集め、中国の存在感を内外に示す思惑は狂いつつあるのではないか」
「こうした事態を招いたのは、人権抑圧の非難に『でっち上げ』と反論するだけで情報を公開しようとしない中国の体質である」

習近平氏の思惑は外れて当然である。情報を公開しないのは、内政が維持できなくなるからだ。事実を求めようとしない中国国民の側にも責任はある。

読売社説は「米政府は、新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の少数民族ウイグル族100万人以上が施設に収容され、拷問や強制労働、虐待が行われていると指摘している」とも言及するが、「100万人以上」という具体的な情報には説得力がある。

読売社説は書く。

「人権の尊重は世界人権宣言などでうたわれた普遍的価値観で、中国も賛成している。『内政干渉』を理由に国連による調査や監視を拒否しているのは筋が通らない。日本も中国政府に直接、調査団の受け入れを促すべきだ」

習近平政権の中国は、筋が通らないだけではなく、道理に外れた政権なのである。そんな中国とどうやって付き合っていくべきなのか。この課題は大きく、そして難しい。しかし日本は民主主義を信じ、欧米の民主主義国家と力を合わせることが前提になるだろう。