設立から13年で1000組以上の加害者家族を支援

そこで2008年から加害者家族の支援を始めました。当初は、手探りで本当に苦労しました。日本には前例がありませんから。欧米の活動や論文を参考にはしましたが、やはり日本と欧米は違う。

欧米では家族に連帯責任を問うことはなく、社会的制裁の対象にもなりません。殺人犯のお母さんがインタビューに答えたからといって職場に苦情や抗議がくることはありません。ましてや仕事を辞めざるをえない状況に追い込まれるようなことはありえない。加害者家族が、自分たちの抱える事情や問題をオープンにできる社会環境にあります。

一方、日本には、欧米とは違って“世間”がある。世間は、犯罪加害者だけではなく、その家族の責任まで追求しようとする。日本では、まず加害者家族のプライバシーや、生活を守ることを最優先に支援を行う必要があると考え、活動を続けてきました。

――これまでどのくらいの加害者家族をサポートしてきたのですか?

私たちの団体が「相談」ではなく「支援」と打ち出しているのは、相談者に対するアドバイスだけでなく、面会や公判への同行、家庭訪問なども行うからです。それでも一度の電話相談で弁護士さんを紹介したり、ほかの支援団体につないだりして終わるケースも少なくないので、明確な数字ははっきり言えないのですが……。

凶悪犯罪、性犯罪、交通事故、いじめ事件などすべてを含めると2000組を超えるかと思います。現在は年間200件から300件くらいの相談を受けています。そのなかで、数年かけて面会や公判に同行したり、メディア対応をしたり……と支援を続けている家族は、50組ほど。ご家族が背負いきれない重い荷物を一緒に持って、伴走していく感じですね。

状況が把握できず誰に何を相談したらいいかわからない

――加害者家族のプライバシーや、生活を守るという話がありましたが、逮捕直後、加害者家族が直面する問題などに共通点はありますか?

まずは報道対応ですね。凶悪犯罪の場合はメディアスクラムが組まれますから。加害者本人は、刑事手続きの流れに沿って逮捕、拘留され、捜査が始まります。ただそれは加害者本人に限った問題です。

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逮捕直後、家族の大半が警察から連絡を受けるのですが、状況がまったく把握できていないケースがほとんどです。誰に対してどんな罪を犯したのか。自分たちがこれからどうなるのか。隣近所や親族を含めた世間からどう見られるのか。誰に相談をすればいいのか……。誰にも分かりません。

実際には、メディアスクラムが組まれるような凶悪犯罪はさほど多くはありませんが、加害者家族になったみなさんが、メディアが押しよせてくるのではないかと不安を抱きます。