韓国の若い男性にのしかかる「失業」と「兵役」

もちろん、韓国の若者がここまで憎しみをあらわにするのは「低賃金」以外にも、韓国特有の事情もある。「中央日報」は海外メディアの分析を引用する形で、2つのポイントを指摘している。

CNNはフェミニズムに対する韓国の男性の拒否感は深刻な就職競争と兵役義務による剥奪感だと分析した。女性は政府の政策支援で職場を得られる半面、男性は雇用競争で厳しい状況と考えている》(中央日報2019年9月23日)

個人的には、日本のフェミニスト攻撃が、韓国に比べてマイルドな理由はこのあたりにあると考えている。日本は世界の中でも失業率がかなり低い国である。ILOによれば2019年、世界の若年労働者の失業率は13.6%だったが、日本は3.7%と世界で17番目に低い割合となっている。また、男性だからということで自衛隊に入るような義務もない。

つまり、日韓の若い男性たちはともに「低賃金で結婚できない」という問題を抱えているところに、韓国の場合はさらにオンする形で「失業」「兵役」という要素がのしかかっている。その日本以上に過酷なプレッシャーが、日本以上に激しいフェミニスト憎悪を生み出しているのではないか。

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アメリカでもフェミニストへの攻撃が過激化

日韓の話ばかりをしてきたが今、「フェミニスト憎悪」はさまざまな国に広がりつつある。

アメリカでも近年、「インセル」という女性蔑視主義者の男性たちが過激化して、フェミニストへ陰湿な攻撃をしたり、無差別殺人を起こすなどの問題が発生している。ちなみに、「Incel」とはInvoluntary celibateの略で、不本意ながら禁欲を強いられている人々を指す、元々ネット上で生まれた言葉だ。

恋愛や結婚を望んでいるのだがパートナーがいない、身も蓋もない言い方をすれば「モテない男」のことである。ちなみに、アメリカも日本や韓国ほどではないが、成人の未婚率は38%で、1990年より10%アップしている(Forbs「米国の成人の38%は独身、1990年の29%から大幅に増加」)。

インセルは自分たちがモテないのは、イケメン男性や、若くて金持ちの男性に惹かれるような女性たちが世の中に多いということや、「男女平等」や「女性の自立」を掲げるフェミニストのせいだと目の敵にしている。

自分たちが不幸な境遇になったのは、とにかく女性側に原因があるという発想で、韓国の若い男性にも見られた「女たちが人生を謳歌するようになったから、代わりに男が我慢を強いられている」という思想が垣間見える。