ママの人生、あなたの人生
ママは幸せですか? そして、自分と同じような人生を、娘のあなたにも送ってもらいたいと思っていますか? 口に出さなくても、母親の思いは、娘に伝わるものですよね。
ママが幸せなら、同じような幸せな人生を娘にも送ってもらいたい、と思うものです。ママが幸せでなくても、同じような人生を娘にも送ってもらいたいと思うママもいます。というのは幸せでも幸せでなくても、それ以外の女の人生が、ママの世代の女のひとたちには考えにくかったからです。ママの言わず語らずの「期待」をあなたは感じとっているからこそ、その「期待」にそむけば「裏切る」ことになるかも、って心配しているんですね。
たとえママが幸せでも、あなたが「イヤ」なのは、ママの人生が「家族に尽くすだけの人生」に見えているからですね。前の質問の答えでいえば、主役でなくて脇役の人生を送っているように見えるからです。そして「尽くされている」家族のひとりとして、あなた自身もママに対していくらかの負い目を感じているのでしょう。だから「裏切る」なんていう強いことばが出てくるんですね。
過去と未来の世代の違いを考えてみる
ふたつの面から考えてみましょう。これまでの女の人生とこれからの女の人生、過去と未来の世代の違いから。
まずママの世代の女のひとたちに、どういう人生の選択肢があったでしょうか。ママは結婚前に働いていましたか? その前にママはどんな家庭で育って、どんな教育を受けましたか。もしママがパパを選ばなかったら、どんな人生がママを待っていたと思いますか。最初っから専業主婦の女性なんていませんから、ママの世代の女性にはほとんど結婚前に働いた経験があったはず。専業主婦になったのは、仕事を辞めたから。もしママが仕事を辞めなかったら、今頃ママはどうなっていたと思いますか。ママの女友だちのなかで、仕事を続けてきた女のひとはいますか? ママはそういう女性と自分をくらべたりすることがありますか?
もちろんどんな人生を選んでも、得るものと失うものの両方があります。ママはきっと自分の選択に今は満足しているでしょうが、ひとはとりかえしのつかないものは、事後的に正当化する傾向があります。そのママの幸福を支えているのはパパと仲がよい、ということでしょう。あなたのパパが浮気もせず、失業もせず、ママを殴ったり蹴ったりする夫でなくて、ほんとうによかったですね。
もしママが自分の人生を肯定していたら、娘のあなたにも自分と同じような人生を送ってほしいと思うでしょう。それがママの世代の女の人生の、数少ない選択肢だったからです。
これから先は未来のあなたの世代の女の人生の話です。