「ほったらかして、教えない」のベースにある指導哲学

20歳未満、ジュニア育成の第一人者の子供たちとの接し方には、どのような教育・コーチングの秘密が詰まっているのか。

青木自身がゴルフを始めたのは中学1年生の時だ。

「ゴルフせんか、と親父が前ぶれなく言ってきました」

やるなら我流ではなくて基本からしっかり習ったほうがいい、と生まれ育った地元、福岡のスクールに通うことになる。

初ラウンドは144だったという。そして2回目が108。そこまでの記憶はある。

「泣きながら回っていました。とんでもないほうに打ち込んで、クラブを持って走らんか、とか言われて。楽しくはなかった」

ゴルフとの関わりは苦いところから始まった。

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高校1年生の時に学校にゴルフ部ができて入部した。福岡大に進んでからもゴルフ部に入る。やはり目標はプロゴルファー。ツアーで活躍して賞金を獲得して、いい暮らしをしたい。誰でも夢見る未来だ。だが、そう簡単なことではない。

「プロになりたくてプロテストは5回ぐらい受けました。でも、もう2回目ぐらいで向いてないなと、自覚しました(笑)。でも、後に引けない。ゴルフは他のスポーツと違って、線引きしてくれる人がいないんです。テストに通るわけないな、と思いながらダラダラと受け続けていました。惰性でしたね。プロで活躍するぞ、という強い気持ちが自分には芽生えてこなかった」

中途半端な立ち位置で、未来像も描けない。

2010年にコーチになって、初めて生徒を預かったのは亀代順哉選手だ。そして現在は三ヶ島かな(11月28日、今シーズンの最終戦、国内メジャーの女子ゴルフツアー選手権のリコーカップで初優勝)を含むプロが5人。その他の生徒を20人ほど預かっている。

「実は手が回らなくなっているので、プロ選手はこれ以上、増やすつもりはない」という。

今は、ジュニアのアマチュア選手をプロに育てることに軸足を置く。それがゴルフ指導者としての青木の原点であり、真骨頂である。