「あなたは技術がないからプロになれない」とあえて教え子に言う理由
親が押し付けるのは親のエゴ。子供の立場になってみて考えてみることが、熱くなりがちな親には必要なのだ。
「親は我慢です」
今、青木のミッションは、ジュニアからプロゴルファーを育てて、世界で活躍する選手にすることだが、時には冷酷にならなければいけないこともある。
「ジュニアたちには、プロだけが生き方じゃないよというのを伝えていきたい」
プロゴルファーになれるのはほんの一部の才能を持った人間だ。それは希望に胸を膨らませるジュニアには残酷な事実だ。でも、大多数は青木と同じように夢破れる。
「あなたは技術がないからプロにはなれない」
青木はそんな非情な通告をする。それはむしろ、親切な導きでもある。人生の選択は早いに越したこしたことはない。次の目標に向けてスタートラインに早く着くことができる。
「ゴルフしかやってきてなくて、次に何もない、では生きるすべがないということ。ジュニア育成にはゴルフだけじゃないことを教えることも大事だと思います。
『無理だよ』と言ったのはこれまで4、5人はいますね。夢をつぶすことにもなる。でも、視点を変えれば、『たかがゴルフ』なんです。これから何十年も生きていかなきゃいけないのに、へたするとどんどん仕事の選択肢もなくなる。21歳、22歳、大学生ぐらいの年齢で決断させます。言いやすい客観的な判断材料はプロテストに落ちたこと。落ちた時にそれまで、どんな努力をしているのか。努力が足りないのはまだ、何とかなる。考え方がなってないのが一番ダメ」
人生設計をしてみる。夢と現実は違う。夢ばかり追っていて、現実が反映されていないと道を踏み外す。
「夢は願えばかなうという人もいますが、それほど世の中は甘くないですよね(笑)。そもそも成功した人はそれを努力とも思ってない。自分はこれだけやってきたと力説する人はどうかなと思いますよ」
自分の夢に酔って、自己満足していても意味がないということだろう。