「落ちこぼれ」だけがオフィスに集まっても生産性が上がらない
職場内の目標と計画を共有するにはリーダーの資質も問われてくる。このIT企業の人事部長は次のように語る。
「目標も計画も明確ではないから、進捗管理もよくわからない。仕事ぶりが見えないからコミュニケーション頻度がやたらに多くなるという悪循環に陥ってしまう。目標と計画を明確にできない、ゆるいリーダーや上司ほどリモートワークはつらいと思う」
リーダーに関していえば、問題はコミュニケーションだけではない。リモートワーク下の人事評価をどうするかに悩む管理職も多い。通信系企業の人事部長はこう語る。
「成果をどう測定するかについては腹をくくる必要がある。対面の時代でもちゃんとマネジメントできる人と、できない人がいるように、リモートになったからといってそれが変わるわけではない。リモートでも部下のコンディションをチェックできるし、パフォーマンスも計れる。対面でも評価がしっかりできていた人はリモートになっても、どうやったら評価できるかをものすごく真剣に考えるはずだ。対面でもあまり考えてこなかったマネージャーほど、リモート下では余計に難しいだろう。マネジメントできる方法論を一人ひとりがしっかり考えて実践することが大事だと、管理職に常に言い続けている」
管理職も一般社員も、リモートワークで成果を出す人は自己管理に厳しいという共通点があるという。周囲の目がなく、自由裁量がある分、より自律的な働き方が重要になる。
そうなると、そこからこぼれ落ちる人も出てくるだろう。すでに、自称「テレワークのせいで生産性が下がってしまった」と嘆く一部の社員を、フルリモートから一部出社に戻す動きも出ている。
だが、前述したように、テレワークでの生産性や仕事効率の低下は、「通信設備など環境の悪さ」や「コミュニケーションの減少によるチームワーク不足」といった面も否めない。しかし、その一方、テレワークのせいではなく、単純に本人の仕事のやり方がマズいことが原因になっているケースも少なくない。
結局のところ、「落ちこぼれ」だけがオフィスに集まっても、生産性が上がるどころか、さらに下がってしまう恐れもあるのではないだろうか。