共産党候補の出馬・不出馬で選挙区を比較する

それでは、どのように比較を行えば野党共闘の効果に迫れるでしょうか。いくつか方法が考えられますが、ここでは前回と今回の野党候補出馬状況で選挙区を分類し、グループ間で比較することで共闘効果を示してみたいと思います。

つまり、時間軸も組み合わせるのです。野党候補の出馬パターンを細かく分類すると前回と今回の組み合わせで膨大になってしまいますので、ここではごく単純に共産党候補が出馬したかどうかで分けて確認してみます。

データ出典:総務省(前回選挙)、朝日新聞(今回選挙、速報の確定値)

図表1は、前回と今回の共産党候補の有無に応じて289選挙区を4つに分類し、選挙結果に関するいくつかの指標とその変化を示したものです。ここでは4つのグループのうち表のA(共産党撤退区)とB(共産党連続不在区)とを比較してみます。

なお、AとBを比較する理由は、Cは該当選挙区数が10と少なく、Dは野党勢力が明確に弱い選挙区が多数のため、他のグループと比較しにくいためです。これに対して、AとBは共産党比例区得票率をはじめとして野党の支持基盤の厚さに関する指標にあまり差がなく、似た条件とみなすことができます。

AとBの、野党共闘効果の確認に影響を与えうる最も大きな違いは、共産党の撤退と並ぶもう一つの野党競合の解消パターンである前回立民・希望の競合区です。立希競合区はAに10、Bに20含まれています。これによる野党共闘の効果がBに若干乗るのですが、共産党撤退による効果を過大ではなく過小に見積もる方向に働くため、ここでは許容することにします。

共産党候補の撤退は野党の成績向上に寄与した

さて、表でAとBを比較すると、共産党候補が撤退したAグループではどの指標で見ても野党側の結果が改善していることがわかります。候補の得票率は上昇し、接戦区は大きく増え、野党側の勝利数は倍となっています。

一方のBグループでは、接戦区は増えたものの得票率は低下し、野党の議席数も減少しています。どの指標を見ても、Bグループに比較してAグループの状況は好転しており、共産党の撤退は野党候補の成績向上に明らかに寄与したように見えます。

両グループの選挙結果の差異は、統計分析を行っても明確です。たとえばt検定という基本的な統計分析を行えば、Aグループの前回野党最上位候補得票率の平均値は今回の値、Bグループの値と統計的に有意な差があることがわかります。