ポルトガル語しかしゃべれない母親に翻訳アプリで相談

障害×性×言語の異なる外国人、という三つのハードルが重なると、問題の解決は非常に困難になる。

【新島】「ブラジル人の女の子で、自慰行為のやりすぎで、性器に触りすぎて病気になってしまっている子がいました。トイレも、男の子のように立ってするような状況で。

母親に伝えようとしたのですが、向こうはポルトガル語しかしゃべれない。お互いに片言の英語でやりあって、翻訳のアプリを使いながら『汚れた手で触っているから、病気になっています』『じゃあ病院に連れていきます』と、なんとかコミュニケーションを取ることができました」

ただ、外国籍の保護者は性に対してオープンな人も多く、日本人に比べて話しやすい傾向がある、と新島さんは指摘する。

逆に日本人の保護者は、性に関する問題を話しあうこと自体に抵抗があるケースもある。また、日々の現場で起こっていることを保護者に伝えようとしても、会社から「性に関する話は、保護者に言わない方がいい」と止められることもあるそうだ。

性の問題に対して、放デイと保護者のコミュニケーションがうまくいかないことによって、最も不利益を受けるのは、子ども本人であることは間違いない。大人の都合で問題の共有や解決が先送りされてしまっては、子どもの利益にならない。

学校との連携の模索

放デイの職員の力だけでは解決が難しいケース、様々な事情で親との連携がうまくできないケースの場合、学校に対して協力を求めることもあるという。

【新島】「学校の相談支援員に相談して、保護者・相談支援員・私の三者で協議することもあります。相談支援員と密に連絡をしていくと、そこを通して学校と話ができる。保護者・学校・放デイの担当者会議を開いてくれる支援員はまだまだ少ないですが、困っている時はやってほしいと頼むこともあります。

ただ、性に関する問題が起こった時に、担当者会議を行って解決までたどり着いた例はありません。相談支援の人とも色々な話をするのですが、性の話は流されてしまう。きちんと話しあえるまでに、何重にも壁があるのを感じます。

先生方の話を聞いていると、学校の現場でも、性に関する問題は見て見ぬふりをしてしまっていることが多いそうです。特別支援学校の先生にも聞いたのですが、特別支援学校の教員になる過程でも、障害のある子どもの性に関する問題については学ばない。性的なトラブルへの対処についても、勉強しない。特別支援学校の先生になるような人でも、そういう勉強はしないんだな……と。でも、実際の現場では、そうした問題はたくさん起きている。