ヒートショックはどの年代でも起こることがある
次に、ヒートショックを起こしやすい方について。
高齢者や、動脈硬化を引き起こす基礎疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)を持つ方などが考えられます。
その理由として、高齢者は加齢により生理機能が低下し、体温や血圧を正常な値に保つことが難しくなる傾向があげられます。また動脈硬化を引き起こす基礎疾患を持つ方は、動脈硬化がある場合には血圧変動の影響を受けやすく、脳卒中や心疾患などにつながるリスクが通常より高いため、注意が必要です。
動脈硬化を起こしやすい疾患は年齢とともに増加する傾向がありますので、「ヒートショックは高齢者に起きやすい」という認識は間違いではありません。実際、先述の「浴槽内での及び浴槽への転落による溺死及び溺水」による死者の9割が65歳以上の方です。しかし、「30代の男性社員が慰安旅行先でヒートショックが原因と見られる形で急逝された」といったケースもあり、ヒートショックはどの年代の方にも起こる可能性がある、身近な脅威であるということを認識していただきたいと思います。
実は、ヒートショックは飲酒にも深く関係があると言われています。アルコールを摂取すると、アルコールの代謝生産物であるアセトアルデヒドが血液中で増加し、血管を拡張させ、一時的に血圧が下がります。普段より血圧が低い状態で入浴をすると、温度差による血圧の変化の幅が大きくなってしまい、ヒートショックを引き起こしやすくなるのです。
予防のポイントは「温度を一定に保つ」
では、どのようにしてヒートショックを予防すればよいのでしょうか。
一番大切なことは、「なるべく温度を一定に保つ」ということです。具体的な方法についてアドバイスさせていただきます。
(1)入浴の際の温度管理
・入浴の前に、脱衣所や浴室を温めましょう。脱衣所に暖房を置き、浴室に暖房の機能があれば使用してください。浴室の暖房がない場合は、お湯はりの際にシャワーを使用するのもおすすめです。高いところにシャワーを設置してお湯をはることで浴室全体を温めることにもつながります。
・湯につかる前にはかけ湯をしましょう。
・素足で冷たい床に触れないよう、マットなどを敷くのも有効です。
・お風呂の温度は、41度以下で湯につかる時間は10分以内がよいとされます。熱いお湯や長風呂をすることで体温が上がり過ぎてしまうことがあるため、それを避けることで血圧の変動を防ぐことができます。
・居間や脱衣所の平均気温が18度未満の住宅では、熱め入浴(湯の温度が42度以上、15分以上の入浴)をする確率が高いとされるデータがあります(国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」)。さらに、WHOは「住まいと健康に関するガイドライン」で寒さによる健康被害から居住者を守るための室内温度として18度以上を強く勧告しています(WHO Housing and health guidelines:World Health organization 2018.11)。
ヒートショックの予防として、浴室まわりの環境が注目されることが多いですが、家全体の温度を一定に保てるよう、自宅が古い場合は床や壁のリフォームを検討する、窓やサッシを断熱性の高いものに交換するなど工夫をするとよいかと思います。