関門⑥:除名

最後にひとつ、まだ実行段階に移されていない強硬手段がある。除名だ。3分の2以上が出席した本会議で4分の3以上の賛成があれば、強制的に除名、失職させることができるというルールがある。

ただ、これが簡単な話ではない。除名の対象は、基本的に議会内での言動に対する問題が問われるものであり、よほど明確な理由がない限り乱発することは許されない。なぜなら、これが日常的にできるようになると、政争の一環でいくらでも気に入らない議員を排除できてしまうからだ。

私自身、かつて京都市議会に籍をおいていたが、当初は、自民・公明・民主・共産の4会派+無所属1という構図だった。忖度そんたくなく市政や議会の問題に切り込むことで、私のことを面白く思っていない議員も多かった。簡単に除名が成立するなら、4会派が結託すれば私を失職に追い込むことが簡単できてしまったはずだ。

ところが、そんなことはできないのである。なぜなら、除名で失職した場合、知事に対して異議申し立てができ、場合によっては裁判も可能だ。それにより除名は無効とされるケースもあり、議会の良識に照らしてほとんど実行されることはない。

実際に2021年4月、北海道本別町の町議が委員会資料をSNSに投稿し、議会が求めた陳謝を拒んだとして全会一致で除名されたケースがあったが、先日北海道は処分取り消しの審判を下し、この町議は議員活動を再開した。

第2、第3の居座り議員の誕生を防ぐために

今の段階では、議会外で起きた事件に対し、除名という手法を使うのはさすがに無茶、というのが議会筋の声である。だが今後、都議会として何かしらの決着をつけなければ収まらないだろう。

村山祥栄『地方を食いつぶす「税金フリーライダー」の正体』(講談社+α新書)

そして、うやむやに収めてはならない。私たちがそのためにできることは、木下都議が辞職するその日まで、怒りの火を絶やさないことだ。今後二度と、第2、第3の居座り議員を誕生させないためにも、市民のみなさまにはぜひともお願いをしたいと思う。

最後に、今回の事件でますます地方議員への不信感が高まっているが、誤解を恐れず一言申し上げたい。

現在、筆者は全国の地方議員対象の研修講師を引き受けている関係で、年間数百人の地方議員と接している。地方議員のほとんどは真面目にコツコツと活動しており、市民のみなさまと同じようにたいへんな怒りを持って本件を見つめている。また、わが身を戒めている。

ぜひその点は誤解をせず、フラットな視点でお住まいの地域の地方議会を引き続き注視いただきたいと思う。「市民が何を言っても変わらない」と思う方も多いが、それでも、「市民が声を挙げなければ変わらない」のも現実なのだ。

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