関門②:リコール
とはいえ、こんな問題議員をのさばらしておいていいのか! という話になる。そこで登場するのが「リコール」だ。
本来、公職に就く者に著しい問題があったとき、それを住民の手で排除することができる。これがリコールだ。
ただし、当選後1年という期間を空けねばならないというルールがある。それだけ民主主義において選挙での審判は重く最優先されるべきで、当選翌日にリコールが成立するとなると選挙した意味がなくなってしまうし、いたずらに社会を混乱させないためにも一定の期間を置くことになっているのである。
しかし、今回のように、当選直後に「辞職すべし」という声が爆発するのは想定範囲外の事態で、このルールも木下都議にとってはプラスに作用してしまっている。
関門③:党の責任
選挙において、人々が投票先を決める時に重視する項目のひとつが「政党」だ。
候補者にとって政党に所属するメリットは3つある。ひとつは政策を共有できる同志と行動を共にできること、もうひとつは選挙での政党票の獲得。そして意外に重要視されているのは保証人的な役割だ。
とりわけ新人は、有権者から見ると海のものとも山のものとも知れない。わかりやすく言えば、「新しい人材に活躍してもらいたいけど、この人に投票して大丈夫?」という素朴な疑問がある。有権者の不安や疑念を少しでも払拭するために、候補者は「○○党公認」や「推薦人○○さん」というようなPRを積極的に行う。
事実、木下都議には「都民ファーストの会所属だから」「小池百合子都知事が応援に来たから」という理由で投じられた票が少なからずあったはずだ。
国政における単独比例選出ではないので、すべての責任が党にあるとまでは言わないが、かなりの部分は党または実質的リーダーたる小池百合子都知事に責任がある。本来ならば、党が責任をもって辞職させるのが筋だ。
しかし、小池知事や荒木千陽代表が根気強く説得を試みたという話は今のところ聞かないし、むしろ早期の段階で説得を断念、木下都議を放逐し、あとは自分たちも被害者であるかのような言動になっている。小池知事に至っては、病床から復帰し支援に回った数少ない候補だということをお忘れなのか、ひとごとのように非難するだけだ。
ただし、むしろ木下都議にとってはこれが功を奏したと言わざるをえない。所属政党が早々に見放してくれたおかげで、彼女に「鈴をつける」人間はいなくなってしまったのだから。