息子との関係が教育改革実践家の活動につながった

こうして、息子との関係を築く上で得た発想が、そのまま教育改革実践家としての活動につながってきます。ミッションとなるものは、教育界に蔓延はびこっている「正解主義・前例主義・事なかれ主義」を排して、一斉授業を超える新しい仕組みづくりに奔走すること。

その原体験には息子を通して知ったこと、つまり、無意識に自分が囚われていた「呪縛」の存在があります。

私自身の呪縛を解くことから、すべてが始まったのです。

ちなみに、長男はその後、どんなふうに成長したか?

私が自分の「60歳成人」パーティーを銀座で開いたとき、実は、隣の店を息子が使っていました。彼は自分自身のプロポーズのサプライズパーティーを開いていたのです。息子はその相手と翌年結婚し、今はリクルート出身者が起業した会社のグローバル担当をしています。

彼がこれからどういう人生を歩んでいくのかは分かりません。私にできることは、これからも、学校教育界から滲み出して日本社会を覆う「正解主義・前例主義・事なかれ主義」を自分自身が脱し、壊し、突破し続けることです。

「聖戦」は今も続いています。

仕事、結婚、子育ては「無限のベクトル合わせ」

本書では、家族の営みは「無限のベクトル合わせ」だという話をしています。

つまり、人生とは「無限のベクトル合わせ」の連続なのです。

藤原和博『60歳からの教科書』(朝日新書)

「正解」がどこにもないからこそ、さまざまな人と関係性を更新し、「納得解」をつくりながら、「修正主義」で生きていく。

それこそが、成熟社会の生き方だと思います。

この「無限のベクトル合わせ」はパートナーとの関係性だけではありません。あなたの親や、子どもがいれば子どもとも、ずっと継続してほしい考え方です。

繰り返しますが、人生には、唯一の正解はありません。3択問題でも、4択問題でもないのです。

「無限のベクトル合わせ」のことを、仕事、結婚、子育てと呼ぶ。

そのような感覚が大切だと思います。

これまで数十年もの仕事人生で、ありとあらゆるベクトル合わせをしてきたあなたならば、「家族」における「無限のベクトル合わせ」もきっとできるはずです。

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