できあがったのは、冷凍小松菜と小松菜ペースト、パウダー。冷凍小松菜は都内を中心としたネパール料理店に卸すようになり、ペーストとパウダーは、前述のスーパー、アルビスや旅館、カフェなどで販売されているほか、業務用としてパン屋や菓子店にも卸している。ダルマが営業に駆け回ることなく、商品を取り扱いたいと先方から連絡が来ることのほうが多いという。荒木さんの時代から直販の実績と経験があったこと、小松菜自体の評価が高かったことが追い風になったのだ。

ネパールに「日本の仕事の文化」を伝える新事業

ダルマが代表に就いてから、もうひとつ新たな事業が始まった。それがネパールでのえごまの生産と日本への輸出だ。きっかけは、2015年4月に起きたネパール大地震の際、ダルマが中心となって募金活動を行ったこと。ダルマは責任者として、ネパールにさまざまな支援物資を届けた。その時、多くの人に感謝されながら違和感を抱いた。

「支援物資を届けて『はい、どうぞ』というのは、違うと思いました。私が日本で学んだことは、そうじゃないんですね。日本ではみんな一生懸命仕事をしてるから、成長した。でもネパールでは、いまだに仕事をしないで昼間からブラブラしているのが普通なんです。だから、まじめに仕事をする日本の文化をネパールに伝えたいなって。そうしないとネパールは地震を乗り越えるのが難しいし、発展できないから」

働くことが当たり前ではないネパールで、どうやって労働の意味を伝えるか。ダルマは考えて、考えて、閃いた。

江戸時代より「薬の町」と呼ばれてきた富山市では、健康的なまちづくりを進めるなかで、栄養価が豊富で「畑の魚」と呼ばれるえごまに注目。2014年から地元企業などとえごまの栽培を始め、えごまの植物工場を新設したり、県の主導で露地栽培を拡げながら、商品開発や販路拡大に動いてきた。しかし、これをビジネスとして軌道に乗せるためには一定の量を確保する必要があり、富山産のえごまだけでは足りなかった。

そこで富山市は原産地であるネパールでえごまを作り、それを輸入しようとしたことがあるのだが、うまくいかなかった。知人からそれを聞いたダルマは、立ち上がった。

「私がやりましょう。責任持ちますよ」

こうして2018年、ネパールに葉っぴーFarmの現地法人を設立し、ダルマの故郷、シンドゥパルチョーク郡とその隣に位置するカブレパランチョーク郡でえごまの事業を始めることになった。現地ではネパール人の社員6名のもと、100ヘクタールの土地でおよそ200人の生産者がえごまを作って、日本に輸出している。ちなみに、日本の生産者の耕地面積の平均は約3ヘクタールだから、ネパールの規模の大きさがわかるだろう。

写真提供=ダルマさん
故郷のネパールで開いた農場