「クラウン生産中止論」の背後にあるもの

実際、レクサスのFRモデルはLS/LCのほかにGSとISとRCがラインアップされていたが、GSは2020年に生産中止になり、ISとRCはフルモデルチェンジせず(つまりTNGA-Lを使っていない)、2013年にデビュー(RCは2014年)した旧プラットフォームのモデルをマイナーチェンジして継続生産している。

かつてはトヨタブランドの中核FR車だったマークⅡを引き継ぐマークXも、2019年に生産中止となっている。つまりトヨタはFR乗用車から撤収モードなのである。

レクサスの象徴であるLS/LCまでも生産中止にするかはわからないが、少なくとも採算はとれていないだろうから、TNGA-LのままLS/LCを継続するとすれば、それは商売ではなく、レクサスブランドの面子メンツの問題である。

一方で、中大型FF車用プラットフォームであるTNGA-Kはカムリ、ハリアー、RAV4、ハイランダー、シエナ、レクサスES、レクサスNXなど多くの売れ筋車種に採用され、圧倒的な販売台数を誇っている。レクサスESだけ見ても、アメリカではLSの12倍の販売台数である。カムリに至ってはアメリカだけで年間30万台である。中国で発売されたクラウンSUVもこのプラットフォームを用いている。

こうした流れの中で「クラウン生産中止論」(=TNGA-L採用のクラウン生産中止論)が出てきたのではないかと私は睨んでいる。それではクラウンは中国市場のようにSUVやミニバンとして活路を見いだしていくのだろうか。

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クラウンSUVの日本市場導入は「ない」

ここからは、私の個人的な予想をお披露目したい。

まずSUV化に関してだが、私は日本市場での導入はないと考えている。

クラウンは今までフォーマルなセダンとしてイメージされており、今でも法人需要が多いといわれている。SUVはパーソナルでカジュアルなものであり、セダンとは対極にある。SUVを出したところで今までのクラウンユーザーが買ってくれるとは考えにくいし、SUV指向層からするとちょっと堅苦しい感じのするクラウンブランドでは違和感を覚えてしまうだろう。

1年前の報道にあった「クラウンSUV化説」は中国での展開がリークされたものではないかと思う。

そうなると、今でも年間2万台以上の需要があるセダンのまま新型を作るのが順当である。コストを下げるにはTNGA-Kを使うというのが自然な流れで、レクサスESの車幅を日本の道路事情にあわせてやや狭めたようなモデルになると予想できる。

おそらく大部分のクラウンユーザーはFRであるかFFであるかはさほど気にしないと考えられるし、TNGA-Kのほうがサイズに対して室内を広くすることができるので、十分あり得ると思う。