トヨタの代表的車種の生産終了報道が続いている。世界的なEV化の流れが強まる中で、トヨタは今後どのような戦略を取ろうとしているのか。「カローラとクラウンを見れば、トヨタが目指す新たなブランドイメージ戦略がわかる」と語るのは、自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏だ。その観点から「クラウンブランド」が消えることはない、と指摘するのだが──。

ついにエスクァイアも生産終了に…

トヨタは2020年に4系列(過去には5系列の時代もあった)あった国内販売チャネルを一本化し、どの販売店でもすべての車種を取り扱うようになった。

こうなると系列ごとに専売車種とするために設けられていた兄弟車(事実上同じ車だが、若干デザインを変えて別の車として売る車種)を作る意味がなくなり、兄弟車ではなくとも販売台数の少ない車種の整理が必要となる。車種数が多すぎると販売スタッフが対応しきれないし、マーケティングコストも無駄にかかるからだ。

2021年9月にエスクァイアの生産終了が発表されたのがその流れの1つで、ヴェルファイアもまだ生産中止にはなっていないものの販売グレードは1つのみとなっている。

トヨタ車のロゴ
写真=iStock.com/MoreISO
※写真はイメージです

代表車種クラウンの命運

そのような状況の中、トヨタがクラウンの生産を中止するという報道があった。1955年以来という長い歴史を誇る、トヨタを代表する車種であるがゆえ、大きな話題となった。その報道では、セダン型のクラウンの生産を中止し、SUVモデルとしてクラウンブランドを活用するというものだった。

実際、中国限定モデルではあるものの、アメリカで発売されているハイランダーをベースとした「クラウン クルーガー」というSUVが2021年8月に発売された。中国では2020年春にセダン型のクラウンの生産・販売を終了しているため、中国では報道通りの事態が実現している。さらに中国ではクラウンブランドのミニバン、「クラウン・ヴェルファイア」も発売され、クラウンブランドのマルチ展開が始まっている。

一方で日本ではどうだろうか。日本では2018年にクラウンはモデルチェンジしており、2020末には商品改良(マイナーチェンジ)を行っている。販売が低迷しているといわれているクラウンだが、実際の売れ行きはどうだろうか。