日本の教育が大きく変わり始めている

実は最近、こうした教育のあり方に変化が兆しています。グローバル化やデジタル化が進み、ものごとがダイナミックに変容する時代に、知識を身につけるばかりでは世界から取り残されてしまうという危機感からでしょう。インプット力だけでなく、アウトプット力も育てていこうという機運が生まれているのです。

与えられた知識を記憶してそれを再生する力は、子どもに身につけさせたい大切な学力です。しかし2020年度から小・中・高で順次スタートしている新しい学習指導要領では、思考力や判断力、表現力、そして学んだことを人生や社会に役立てようとする姿勢も同時に重視しています。知識を理解して記憶するインプット力と、自ら問題を発見して解決する・自分を表現するアウトプット力の両方を育てるのが、国の目標になったわけです。知識があれば優秀とされてきた時代とは明らかに変わってきています。

これからの時代を生きる「頭がいい」子どもには、アウトプット力が求められています。苦手な人が多いからこそ、親世代はそれを意識する必要があると思います。

アウトプットは場数を踏むほどうまくなる

アウトプットで大切なのは、自信を持つことです。自信があれば「人に伝えたい」「表現したい」という勇気も湧いてくる。それには場数を踏むしかありません。

兼好法師は『徒然草』にこう書いています。「手のわろき人の、はばからず、文書き散らすは、よし。見ぐるしとて、人に書かするは、うるさし」

字が下手でも、そんなことは気にせずにどんどん書くのがよろしい。下手だからと人に代筆を頼むのはいやらしいことだ、というわけです。

ドキドキしながらアウトプットしたことが失敗すれば恥ずかしいし、カッコ悪いと思うものです。そうした空気を親まで醸し出してしまうと、子どもの勇気はしぼみます。最初はうまくできなくても、場数を踏むうちに見せ方、伝え方は上手になっていきます。親は結果に一喜一憂せず、子どもの勇気をたたえてやってほしいと思います。

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