また、男子部屋とも同じフロアで距離が近い。ある者はこんな経験を振り返る。

「男子部屋が近いのはどうかと思う。各国の士官学校や部隊の女性の隊舎は鍵がかかっている。しかし防大はそうなっておらず、女子トイレに男子学生がいたこともあった。それはダメだと指導教官に言っても、『公になるとあいつにも未来があるから』と揉み消された」

では旧号舎のように女子フロアの方がよいのかというと、今度は「旧号舎は4人部屋、新号舎は8人なので数が多い方が楽しい」「旧号舎が『大奥』と呼ばれているのが嫌だった。それは女子が異質扱いされてるってことだから」という意見もあった。

「お前みたいなクズはいらねぇんだよ!」

心や身体が弱っているときに受ける指導は、より心に突き刺さる。

「1年のとき、怪我して松葉杖をつくことになった。できないことも増えて同期に迷惑をかける代わりに、できることは同期の分まで引き受けた。でも、ある日呼び出しを受けた上級生に、『お前、階段では松葉杖使ってないって聞いてるぞ! お前みたいなクズはいらねぇんだよ! お前の存在が同期の邪魔だ! お前みたいな奴は早くやめちまえ! いらねぇよいらねぇ!』と言われた。

自分ではこれ以上ないくらいに必死に生きていたつもりだったから、かなり応えた。こいつの前では涙を見せるものかと思って耐えたけど、部屋に帰って泣いていると過呼吸になった。

息ができなくて手足が痺れて、なんで頑張ってるのにこんな思いをしなくちゃいけないんだろう、私は防大にいない方がいいんじゃないかと思った。その4年生はその後親しげに話してくるようになったけど、卒業まで苦手だった」

上級生としては、「自衛隊に馴染めそうになければ早くやめさせるのがその子のため」「続けるのであれば覚悟を持たせる」という思いがあるので、1学年の比較的早い時期だからこそこういう指導になったのではないかと推察する。だが、そういった上級生の心情を推し量ることのできない1学年にとっては、ただただつらいだけだ。

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苛烈な指導を受けた生徒がうつ病に

ある者はこう振り返る。

「防大の教育自体が、その人の性格や感じ方、考え方を一度壊して作り替える印象がある。私は本当に世間知らずで甘えていた部分があるから、一度ペシャンコになってそこからいろいろ学んで『人格をもう一度、一から作りあげられた』と感じている。

結果、たくさんのことを学べたり身に付けられたりしたと思う一方で、ペシャンコにされたときのことが忘れられず、今も自己評価が低いまま」

彼女は自己肯定感の低下にさいなまれ、しばらくうつ病を患ってしまった、と話す。