企業と消費者のコラボレーション
【イケダハヤト】少し前に僕の友だちが「棚が回る」冷蔵庫のコマーシャルを見て「なんでこんなものが必要なんだ」と呆れていました。こんなことを宣伝するために莫大な広告費を使うなんてどうかしている、世の中にはもっと大事な課題がたくさんあるのに、と。
【ガーズマ】アメリカにもそういう例はごまんとありますよ。しかし、消費者が注意深くお金を使えば、企業と私たちの関係も変えていくことができると思います。
【イケダハヤト】そうですね。消費者と企業がいっしょになって世の中を変えることもいまは可能な時代です。僕がお手伝いした中古車取引のガリバーという会社が消費者とコラボレートしたキャンペーンがそのひとつの例です。震災があったとき1000台の車を寄付することをきめました。そのなかの100台分の使いみちをソーシャルメディアを通じて消費者からつのったのです。被災地の窮屈な生活で体が硬くなってしまったという人のためにヨガ教室をやったらいいのではないかというものがありました。このアイデアは採用されて、ガリバーの車でヨガのインストラクターを被災地に派遣したのです。「タッグプロジェクト」という名前のものだったのですが、消費者と企業がフラットな関係でタッグを組んで一つの問題を解決するという取り組みに感銘を受けました。
【ガーズマ】私がスペンド・シフトのなかで何度も繰り返しているのは、人々が「価格と価値」の双方を求めているということです。安いだけでは買わず、何にお金をつかっているか自覚的になっているのです。ブランドや商品に価値があれば、もっとお金を払っていいと思っている。人々は消費により「戦略的」になりました。自分たちが尊敬する企業のものを買うことを通じて、世の中を変えていけることに気づいているのです。
※すべて雑誌掲載当時
【今回登場した企業のURL一覧】
・U2Plus http://u2plus.jp/
・ピリカ http://www.e-pirka.com/
・マイクロソフトの職業訓練プログラム「エレベート・アメリカ」
http://www.microsoft.com/about/corporatecitizenship/en-us/community-tools/job-skills/
世界的に活躍する消費者行動の研究家。ヤング&ルビカムの元チーフ・インサイト・オフィサー、ブランド・アセット・コンサルティング社長。消費者の価値観やニーズの変化をデータで分析し、企業の適応を支援している。主な著書に、『スペンド・シフト』(共著、プレジデント社)、Brand Bubble (未訳)がある。毎年各分野の第一人者が集まるTEDカンファレンスの講演者としても人気が高い。現在執筆中の次の著作は『It's a Woman's World』(仮題)。政治やビジネスのあらゆる局面で「女性的なものの見方やアプローチ」こそソリューションへの鍵であることを実例をまじえて紹介する予定。 http://johngerzema.com/ http://twitter.com/#!/johngerzema
イケダハヤト
ブロガー。2009年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、大手半導体メーカー、ベンチャー企業にてソーシャルメディアに関するマーケティング業務に従事した後、独立。ソーシャルメディアと社会変革、若者のライフスタイル、キャリアの変化に関する情報を発信している。著書に「フェイスブック私たちの生き方とビジネスはこう変わる(講談社)」などがある。講談社現代ビジネスにて「ソーシャライズ!」を連載中。 http://ikedahayato.com http://twitter.com/ihayato