「浪費の国」アメリカの価値観がシフトしているという。リーマン・ショックを境に、消費者は「より安く、より多く」を追求することをやめ、「よりやさしく、よりよく」を商品にも企業にも求めるようになった。この一大変化を数字と事例で分析した『スペンド・シフト』は、日本における若者の消費動向や、震災後の日本におけるにも驚くほどあてはまる。このほど来日した著者のジョン・ガーズマ氏が、ソーシャルメディアを通じた社会変革に詳しい若手ブロガー、イケダハヤト氏と、消費の未来について語りあった。

【ガーズマ】スペンド・シフトは、ただ節約したり倹約したりすることではありません。わたしたち一人ひとりがもっている力を認識することです。日本では地震のあとに被災者を助けるたくさんのアプリケーションやサイトが立ちあがりましたが、同様に消費者一人ひとりも「お金の使い方」ひとつで社会を変える力を持っていることが私たちの調査から浮かび上がってきました。消費は投票のようなもので、私たちは自分の価値観に合う会社を、商品を買うことで支持している。これは「普通の人々」の望んでいることを理解できてない政府や大企業に対する不満の裏返しでもあります。ビジネスから個人にパワーシフトが起きている。消費者が自覚的に消費を通じて影響力行使するようになれば、資本主義を「より多く」を追求するものから「よりよく」を追求するものに変えていけると思います。

【イケダハヤト】僕がこういう動きを興味深いと思うのは、アメリカもどの国も経験していないような問題、さきほどの自殺の問題や高齢化社会など日本にはいくつもあって、それをITの力で解決しようとしているということです。日本は「課題先進国」とことばでよく語られます。たとえば日本では年間で30000人が自殺し、100万人近くの人がうつ病にかかっています。そういう問題を解決する会社もできています。U2Plusという、うつ病治療のためのSNSなどの取り組みは非常に興味深い。

【ガーズマ】つまるところ、こうした動きは、コミュニティの力を拡充し、コミュニティのなかでか語り合い、関わり合いながら人々が問題解決をしていくということにほかなりませんね。そこでソーシャルメディアが問題解決に必要なだけの人や知恵を集めてくれる。こうした取り組みを、私は「町内会的資本主義」と呼んでいます。

【イケダハヤト】政府だったり既存のしくみだったりを信頼できないから自分たちでつくってしまおうという動きですね。僕の知っているピリカというスタートアップは、世界のゴミの問題を解決しようとしています。スマートフォンのアプリで、ゴミをひろった瞬間を写真にとって、たとえば「いま上海ゴミが拾われました」とコメントをつけてアップすると、それを見た人が「ナイス!」のボタンを押す、そうやって楽しくゴミ拾いができるというものです。

【ガーズマ】面白いアイデアですね。