ガソリン車の販売禁止なら最大100万人の雇用減
2021年4月22~23日に開催された国連気候サミットで、菅総理は2030年度温室効果ガスの排出量を2013年度から46%削減することを宣言し、これまでの目標を20ポイントも引き上げた。米国バイデン政権が引き上げた50~52%に合わせて数字を調整したようだ。
欧州もおおむね半減すると答えたが、オーストラリアなど回答を保留した国もあり、足並みはそろっていない。脱炭素政策の目玉といわれているのが、再生可能エネルギーと電気自動車(EV)である。その旗振り役を担っているのが、小泉進次郎環境大臣である。
小泉進次郎環境相はカーボンニュートラルの目標達成のために、ガソリン車の国内新車販売を事実上禁止する議論を展開している。現在環境省と経済産業省では、46%の二酸化炭素削減目標のうち、2%をEVの普及により実現しようと検討中である。小泉大臣は記者会見で「30年代半ばという表現は国際社会では通用しない。半ばと言うなら35年とすべきだ」と述べ、販売禁止の時期を示した。
一方、トヨタ自動車の豊田章男社長は日本自動車工業会(自工会)会長として行った3月11日の記者会見で、「このままでは、最大で100万人の雇用と、15兆円もの貿易黒字が失われることになりかねない」と警鐘を鳴らした。自動車の設計、部品の製造、組み立てから販売まで自動車関連業界で働く約550万人のうち、70万~100万人が職を失うことになりかねないというわけだ。
私はこの発言を非常に深刻に受け止めている。ガソリン車の販売を閉じることは日本経済を直撃し、雇用に影響する。EV車になれば部品の数も圧倒的に少なくなる。内燃機関とトランスミッションが、バッテリーとモーターに変わると、コストの大半はリチウムイオン電池となり、国内で電池を製造できればよいが、原材料を中国に握られている。
そのうえ、もし中国製のバッテリー頼みになるようなことになれば、日本の自動車産業は中国にその心臓部を牛耳られることになる。EV車のリチウムイオン電池は自動車のコストの4割近くを占めている。