たばこ税によって実質的な二重課税が起こっている

そもそも日本においてこの種の物品税は、戦前の1937年に制定された税制、北支事件特別税の一つとして創設されたものをその前身とする。つまり戦費調達の一環で制定された税制なのだ。基本的に物品税は、贅沢品とされるものに対する課税で、生活必需品に対してはこの種の課税は行われないのが基本だ。

しかし物品税は、1989年の消費税法施行に伴って廃止されることとなる。それというのも完全内税方式をとる物品税を主として外税方式となる消費税が並列することになると、税制では“禁じ手”とされる二重課税になってしまうからだ。従って、その廃止は当然と言えるだろう。

にもかかわらず、物品税廃止後も、酒税やたばこ税など主に嗜好品に対する物品税的課税は、1989年以降も継続されることとなったのである。

そもそもで言えば、このこと自体が、大いなる矛盾なのだ。しかしそうした矛盾は、納税義務者を一般消費者ではなくたばこの製造業者と位置づけることで、取りあえずつじつまが合うような体裁がとられている。

しかしこれは、はっきり言って詭弁だ。なぜならたばこ製造業者が納める税金は、たばこの生産コストとしてたばこの販売価格に上乗せされて、結局のところ消費者が負担することになるからだ。

たばこ税は最終的に消費者が負担している。誰もこのことは否定できないはずだ。

もはやたばこの販売価格は、たび重なる増税によって、贅沢品のレベルにまで上がってきている。従ってその課税は、実質的な物品税だ。

繰り返しになるが、消費税の導入によって廃止されたはずの物品税が、たばこについてはいまだに残っているのだ。つまり二重課税状態が「放置」されていると言っていい。

二重課税のどこに問題があるのか? 「二重課税」とは、同一の納税者や同一の取引・事業に対して、同種の租税が重複して課税されている状態を指す。

英語で「タックス・オン・タックス」と表現するが、こちらの方がイメージしやすいのではないだろうか。

二重課税を行うと、あまりにも税負担が重くなる。その結果、税金を払う、払わせることが目的化してしまうのだ。見方によっては、懲罰的課税とも言えるだろう。それはある種の「罰金」だ。何か違法行為をしたわけでもないのにペナルティを課せられ、経済的に大きな損失をこうむることになる。だから、二重課税は排除しなくてはならないのだ。

こうした考えは、国際的コンセンサスを得ていると言っていい。しかしたばこ税の場合、その納税者が少数であるため、この二重課税の問題はなかなか表面化してこない。こんなことを許していたならば、税金をとりやすいところ、つまりマイノリティへの課税が横行していくことになるだろう。

実際に、海外ではマイノリティが理不尽に課税されているケースがある。例えば、ドイツ、オーストリア、オランダ、フィンランド、スイス、チェコなどのヨーロッパの国々では、犬の飼育者に対して「犬税」が課せられている。また、かつてブルガリアでは少子化対策として「独身税」が課されていた。たばこ増税を放置していると、日本でもこのようなマイノリティへの課税が加速する可能性がある。

なぜ喫煙者、あるいはたばこの消費者は、こうした理不尽な納税を強いられるのか。

政府には、そうした疑問に真正面から答える義務があるはずだ。

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