たばこの販売数量はピーク時の3分の1に
非喫煙者にとってみればまったく関係のない話と思うかもしれないが、この10月1日からたばこ税の税率が引き上げられた。
たばこ税の税率は、2018年、2020年に続いて3度目の段階的引き上げだ。
この結果、「セブンスター」などの人気銘柄の価格は、1箱560円から600円へ値上げされた。たばこの販売価格のうち、税金分がどの程度占めているのかというと、約60%にものぼる。今回の増税によって、この比率はさらにアップした。
それではそもそも一連の増税は、いったい何を目的としたものなのか。
財務省はホームページ上で、その理由をこう説明している。
「引き続き国・地方で厳しい財政事情にあることを踏まえ、財政物資としてのたばこの基本的性格に鑑み、たばこ税の負担水準の見直し等を実施します」
つまり当然のことながら、徴税当局の狙いは税収増だということは、この説明からも明らかだ。
とは言えたばこ税増税は、自動的にたばこの販売価格の上昇に直結する。そうなるとマーケットメカニズムが働いて、需要、つまり販売量の減少につながるのは当然のことだ。
事実、たばこの販売数量は減少の一途をたどっていると言っていいだろう。
加熱式たばこが普及してきたこともあり、過去との単純比較はいささか正確さを欠くが、紙巻きたばこの販売数量は、1996年がピークで3483億本を売り上げたが、この年を頂点に以降たばこの販売数量は、はっきり減少トレンドにシフトすることとなった。
結果、その数量は、2019年には1181億本にまで落ち込んだのである。ピーク時の実に3分の1の水準である。
増税をしなければ、税収が減少していた可能性が高い
もちろんこれがすべて“増税”の影響だ、と言うつもりは毛頭ない。
理由については、いくつか挙げることができるはずだ。
受動喫煙防止対策としての改正健康増進法の施行(2020年)に伴う喫煙場所の大幅な減少、あるいは日本医師会などによる反喫煙キャンペーンの強化なども、喫煙人口の減少や個々の喫煙者のたばこ購入量の減少につながっていることは間違いないだろう。
しかしそれでも、たばこ税の税収そのものは、毎年2兆円程度で安定的に推移しているのが実情だ。
そうした意味では、増税は税収減を食い止める効果はあったと言えるだろう。逆に言えば、増税をしなければ、税収が減少していた可能性が高い。その点で言えば、財務省のもくろみはズバリ的中したのである。
とは言え、1箱600円ラインを越えてしまったことで、たばこ消費者を取り巻く環境は大きく変化しつつあるようだ。