恒大集団の問題が解決しても、中国には同様の問題を抱える不動産開発会社が他にも多く存在するはずだ。習近平政権としては、そうした第二、第三の恒大集団が出てきた際にどのように対処をしていくのか、早々に危機対応の付帯的な戦略ロードマップを内外に示す必要がある。これができるかどうかが、今後の最大の注目点と言えるだろう。

第二、第三の恒大にどう対処するか

危機対応策の明示が遅れれば遅れるほど、内外で中国の金融・経済に対する疑心が強まることになる。それが中国のみならず、世界の金融市場を混乱に導く。中国経済そのものが不調に陥れば、実体経済もグローバルに悪化する。世界的に旗色が悪い習近平政権にとって、こうしたシナリオが現実化することは文字通りの「悪夢」に他ならない。

チャイナ・エバーグランデビル(Wikimedia Commons)

民主主義国家が束になったEUの場合、各国の民意が交錯する形で、そうした危機対応のロードマップを示すことができなかった。権威主義国家の特徴の一つに、良くも悪くも意思決定の速さがある。本来なら、火事を消すことにそうした意思決定の速さは追い風になるはずだ。しかし、それが逆の方向に回る危険性もまた拭えない。

権威主義国家の場合、旧ソ連でチェルノブイリ原発の事故が隠蔽されたことが示すように、体制に不都合なことは隠蔽される傾向が民主主義国家よりも強い。第二、第三の恒大の存在をいたずらに否定せず、それが出てきた場合の対応をどう明示できるか。戦力を逐次投入するような事態となれば、習近平政権の正統性が内外で失われることになる。

いずれにせよ、今回の中国恒大集団の問題は解決が見込めても、それは中国が抱える不動産問題の「氷山の一角」にすぎないと考えた方が良さそうだ。無責任な悲観は禁物だが、一方で根拠がない楽観もまた禁物と言えよう。アキレス腱であった不動産の問題にどう対応していくのか、習近平政権の胆力が問われることになる。

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