33兆円の債務を抱える中国恒大集団

中国の不動産の大手、中国恒大集団の巨額債務問題を受けて金融市場が揺れている。同社は1996年に広東省で設立され、不動産市況の活況を追い風にマンション開発で業績を急拡大させた。その後事業の多角化を図ったが、近年は中国当局による不動産開発規制の強化もあり、思うような収益を得られずに資金繰りに窮してしまった。

習近平総書記、河北省承徳市を視察
河北省承徳市を視察する習近平共産党総書記=2021年8月24日(写真=中国通信/時事通信フォト)

債務の総額は約2兆元、日本円に直すと33兆円に上ると言われる。中国の経済規模は約100兆元であるため、その2%にも相当する巨額の債務である。こうした債務が支払い不能となれば中国の経済・社会が混乱し、またグローバルに金融不安が広がるという危機感から、9月末の株式市場は世界的に不安定な地合いとなった。

とはいえ様々な識者も解説しているように、恒大集団の場合、その債権者のほとんどが中国の個人投資家や金融機関であるようだ。言い換えると、かつての米国のサブプライムローンのように、中国恒大集団の債務が世界各国にばらまかれているようなことはない。つまり中国がうまく対処できれば、世界に金融不安が広がる展開にはならない。

それでは、事態を沈静化させるためにはどうすればいいのか。答えは明らかで、中国恒大集団の資金繰りに目処が立てばいい。つまり、債権者が救済されれば良いということになる。この点に関しては、いわゆる欧米の様な民主主義国家よりも中露の様な権威主義国家の方が、ある意味ではやりやすい構造にある。以下で解説してみたい。

自己責任論を重視して自爆した欧州

ここで、2010年代の欧州に話を転じたい。欧州では2010年代前半にギリシャやスペインなどで債務危機を、また2010年代後半はイタリアを中心に金融不安を経験している。いずれも長期にわたり深刻化したが、その大きな原因が対処法の拙さにあった。いずれのケースでも、欧州連合(EU)は債権者の「自己責任」を重視したのである。