米国の復帰を求め続けなければならない
ただし、TPP加盟交渉は全会一致でなければ正式に開始されない。オーストラリアやわが国の存在を考えると、中国の揺さぶりがすぐにうまくいくとは考えにくい。しかしながら、やや長めの目線で考えると、マレーシア、来年の議長国のシンガポールなどの歓迎姿勢によってTPPのルールや制度が変化、弱体化する恐れはある。
そうした展開を念頭に、わが国は中国が求めるだろう例外事項の設定を受け入れない姿勢を明確に国際世論に示す。その上で、既存の加盟国にとどまらず、世界経済のサプライチェーンと成長面で重要性が増すアジア新興国、米国、欧州各国などとTPPの意義を共有すべく連携を目指す。それはTPPの目的とルールの堅持と、それを尊重する加盟申請国との交渉進行を支える。
それに加えて、わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない。