保険会社と加入者のアンフェアな関係が解消される

これまでの保険業界は、保険会社と加入者との間に情報の乖離かいりが大きくある、「情報の非対称性」を代表するような業界でした。

例えば、ある人が保険に加入しようと思ったとします。まったく初めての加入者の場合、保険会社はその人に関する情報をほぼ持っていません。そこで、情報の非対称性を埋めようと、保険会社はさまざまな情報の提示を求めます。医療機関による診断書をはじめ、本人に対して喫煙や飲酒の有無や期間、本人だけでなく家族も含めた病歴などを事細かに聞いていきます。

しかし、このようなデータはあくまで本人の記憶によるものですし、ある時点でのスナップショットとも言えるデータです。ウェアラブル端末から得られる、着けている間に流れ続ける連続的なデータと比べると、精度が低いことが多い。これでは、その個人に本当に最適な保険料が設定できません。

そこで保険会社は、少し余裕を持って、高めに保険料を設定します。言ってみれば、バッファを設けているのです。設けざるを得ない、とも言えるでしょう。

保険会社にとっては保険料が高ければ利益が高まるのでいいかもしれませんが、加入者にとっては問題です。このようなアンフェアな関係が、ウェアラブル端末による正確なバイタルデータの取得によって解消されます。

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健康の番人にもなるウェアラブル端末

モラルハザード(倫理の欠如)の解消にも貢献します。

保険に加入している人であればわかると思いますが、加入した時点で「保険に加入しているから何かあっても大丈夫だろう」という気持ちになり、健康にあまり気を使わなくなる傾向があります。その結果、気をつけている場合に比べて病気に罹患する加入者が増え、不必要に保険会社の負担が増えるのです。

ウェアラブル端末によってリアルタイムのバイタルデータが取得できれば、保険加入前はもちろん、加入後も、加入者が定期的に運動をしているかどうかなどを把握できます。運動を継続的に行ない、健康をキープしている加入者は保険料を安くする、というようなサービスを打ち出すことによって、加入者の健康を促進することもできます。保険会社は保険金の支払いを抑えられ、加入者は保険料が安くなり、健康にもなる。どちらにとっても得です。