日本の保険会社が「黒船」に太刀打ちできないワケ
ビジネスというものは、本来、関わる人すべてが幸せになることが目的ですから、データの活用がいっそう進めば、本来あるべきビジネスの姿にシフトしていくことになります。現時点でも、GAFAのうち、すでにアマゾンなどが保険業界への参入を正式にアナウンスしています。
まだアナウンスしていないアップルも、虎視眈々と狙っていると私は見ています。仮にアップルが参入したら、自社の保険を一人でも多くのユーザーに広めるために、アップルウォッチを無料でプレゼントするプロモーションを展開するかもしれません。その次の段階として、「体重が○キロ減ったら、保険料が○円安くなる」「アップル ミュージック(Apple Music)が今月は無料になる」といったサービスを展開していくと予測しています。
日本では、特にヘルスケア領域のデータは、プライバシーの保護などを考慮して、まだまだ扱うことを躊躇うケースが多いのですが、そうこうしている間に、GAFAという「黒船」は着々と自国で実証経験を積み重ね、一人ひとりの加入者に最適な保険サービスを構築するノウハウを確立するでしょう。
日本企業が立ち向かおうとしたときには、時すでに遅し。これまで繰り返されてきた歴史が、保険業界でも起こることを私は危惧しています。
実証実験から動き出した「アマゾンケア」
アマゾンは、投資事業や保険事業を手がけるバークシャー・ハサウェイと、JPモルガン・チェース銀行との合弁で、ヘルスケアサービスを手がけるヘイブン(Haven)という会社を2018年に立ち上げ、「アマゾンケア(Amazon Care)」という保険・医療サービスを開始しました。設立時点では、3社の従業員ならびにその家族、約120万人を対象としたサービスで、その後の市場展開を見据えた、言わば身内での実証実験でした。
しかし、2021年1月、アマゾンは動きます。ヘイブンを解散して自社独自で、ワシントン州を皮切りに、夏までに米国全土でヘルスケアサービスを展開すると発表しました。合弁解消の理由は明確にはされていませんが、2社に期待していたものが得られなかった、あるいは、十分なデータを得たということかもしれません。
いずれにせよ、これまでは内々だけで展開していたアマゾンのヘルスケアプログラムを一般の人も使えるようになりますから、保険会社やヘルスケア業界の企業は、アマゾンに対して警戒を強めています。
というのも、アマゾンケアが手がけるサービスは、保険に限らず、多岐にわたるからです。