田中が郵政大臣当時、三流役所といわれていた郵政省に目をつけ、放送局の免許申請が殺到する中で、郵政省の方針をひっくり返して一括大量免許を交付することでテレビ局に恩を売り、新聞とテレビ局の系列化を推し進めて、新聞にも大きな影響力を持つようになった。
以来、田中派は郵政族と呼ばれ絶大な権力を行使してきた。田中派の重鎮であった梶山静六を師と仰ぐ菅が総務大臣に就任した時、こう考えたことは想像に難くない。
総務省は情報通信や郵便ばかりではなく、地方自治などを含めた戦前の内務省のような巨大組織である。ここを思いのままに動かすことができれば、最高権力者への道が開けると考えたとしても当然だろう。
長男を使って省内の最新情報を仕入れていたのか
総務大臣の時、ロックバンドをやっていた長男・正剛をいきなり秘書官に据えた。社会経験もない25歳の若者がもらった年収は400万円だったといわれる。その後、菅は旧知の「東北新社」創業者に頼んで入社させてもらう。
私は、これは偶然ではないと考えている。
「東北新社」が衛星基幹放送事業に進出するのは2017年。その後、2018年にCSデジタル放送を開局している。
「東北新社」が総務省に対して絶対的な力を持つ菅の長男を厚遇したのは当然である。長男も、父親の威光を十二分に生かして社の利益につなげ、順調に出世していくのである。
ここからは私の推測も入るのだが、菅が権力者への階を上っていくためには、露骨な総務官僚たちとの会食は若干控えめにせざるを得ない。
だが、省内の情報は多いほどいい。そこで、父親に替わって長男の正剛が、総務官僚たちを接待し、省内の最新情報や人の動きなどを、酒の飲めない父親に代わって聞き出し、父親に報告していたのではないか。
総務省が24日に発表した処分内容によると、総務省幹部4人を含む12人の職員(当時)が、2016年以降に延べ39回の接待を受けていたという。9人が減給などの懲戒処分を受けた。
合計額は約53万円で、いずれも「東北新社」側が払っていた。
長男も菅の野望を実現する手駒の一つだったのではないか。そう思えてならない。