「Go To Eat」キャンペーンは誰のためのものだったか

ここまでは、ポイントが人々の心理に与える影響について解説してきました。

では、このポイントサービスというマジックめいた仕掛けに、積極的に参加する必要があるのでしょうか。その答えについては「その仕掛けは、誰が何のために仕掛けているのか」「それを知ったうえで賛同できるかどうか」で判断すべきでしょう。

たとえば、2020年に実施された「Go To Eat」キャンペーンで考えてみましょう。これは、国が感染予防対策に取り組む飲食店の需要を喚起し、同時に食材を供給する農林漁業者を支援するキャンペーンです。

その一環である「プレミアム付食事券」は「販売額の25%を国が負担する(例:1万2500円の食事券を1万円で購入可能)」という特典があります。「25%お得」というアピールです。この仕組みを「割引」で表現するとどうなるでしょうか。

もし、1万2500円分の食事をして代金が1万円で済んだならば、差額の2500円は、本来払うべき1万2500円の20%なので「20%割引」となります。

ところが、国は「20%割引」でなく「25%お得」を前面に出しています。二通りの言い方は、どちらも間違いではありません。では、なぜこういう言い方をするのでしょう。

国がおこなうキャンペーンの目的は、消費者により多くお金を使ってもらうことです。それが外食産業や農業などの第1次産業を救うことになるのです。こういった目的があれば、お得感の強い数字をアピールすることは善である、と言えるのではないでしょうか。消費者として参加することも、また善だと考えられます。

心理的なメリットが大きいポイントサービス

では改めて、保有効果を活用したポイントサービスを、どう考えるべきでしょう。

たしかに、これは買い手の無意識に働きかけ、行動を操作する仕掛けです。ただ、結果的に、買い手が心理的なメリットを得ていることも本当です。

ポイントが貯まる際の期待感や達成感、重要顧客の待遇でくすぐられるプライド、限定されたメンバーとして希少な購入チャンスを得られる喜びなど、ポイントサービスによってさまざまな心理的メリットを体験できます。

ですから、ポイントを貯めて顧客であり続けるのも一つの選択です。それが、顧客の囲い込み目的であっても、メリットを感じるならば気にする必要はありません。Win-Winの大人の関係が成立するのは、決して悪いことではないでしょう。売り手の立場であれば、積極的に顧客との関係作りをするべきです。

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2021年時点のポイント業界においては、「Tポイント」「楽天スーパーポイント」「Pontaポイント」などの大手共通ポイントへの集約が進んでいます。たしかに、利用者にとって、貯めやすく使いやすいポイントは便利です。

一方、地域の個性ある小規模の流通サービス業が、独自のポイントカードを発行しているケースもあります。むしろ、小規模なポイントサービスのほうが、カードの券面デザインなどで個性を発揮できるかもしれません。

ポイントサービスが、金銭的なやり取りの道具としてだけでなく、売り手と買い手の関係作りに活用されるのはいいことだと言えるでしょう。