タコベルの副店長、ウェンディーズのドライブスルーのオペレーター、高級スーパーマーケットのレジ係……。彼らはさまざまな低賃金の仕事をこなしながら、大学の授業を受けていた。「金曜日になれば給料が入るから、そうしたら正式に代筆をお願いできますか」と聞かれることも少なくなかった。
課題の内容について質問をすると、返事が来るのが翌日や翌々日のこともあった。そんなときは、「返事が遅れてすみません。アルバイトのシフトに2つ連続で入っていたので……」と書かれていることが多かった。
また、依頼人の多くはエリート大学ではなく、コミュニティーカレッジの学生だった。仕事と大学に加えて、子育てをしているシングルペアレントもいた。彼らは学位を取ることで、最低賃金のアルバイトから、キャリアアップを図ろうとしていたのだ。
英語が苦手な留学生も
留学生もいた。「微積分ならアメリカの学生に負けないんだけど、アメリカ文学のクラスは助けが必要で」と言う中国人留学生もいた。たいていの大学にはライティング支援センターがあるが、コロナ禍で多くが一時閉鎖された。
たとえ閉鎖されていなくても、いったん自分の国に帰ってオンラインで授業を受けることにした留学生は、時差がハードルとなってリアルタイムの支援を受けることが難しい。そのせいでひどい成績を取るくらいなら、代筆を頼もうと彼らは考えた。
コロナ禍の隔離生活で、モチベーションが低下した学生も多かったようだ。「キラー・ペーパーズのことは昔から知っていたけれど、自分が使うことになるとは夢にも思わなかった」と言う依頼人は多かった。「でも、気分が塞ぎ込んで、課題だけがどんどんたまっていくから……」
友達や家族を新型コロナで失ったという学生もいた。昨年の秋学期にレポートの代筆を依頼してきた学生は、「この授業の教授は今の人で3人目だ」と言った。その前の2人は、どちらも新型コロナに感染して死亡したのだという。
だが、教授たちは、学生たちの苦しみに無関心であることが多いようだ。新学期に配布されるルーブリック(評価基準)に、「締め切り厳守。お涙頂戴話は聞きたくない」と書いている教授もいた。
もし昨年3月に、「数カ月後には、大学生のゴーストライターとして、これまでの人生で稼いできたよりもはるかに多くの金額を稼いでいるだろう」と予言されていたら、私はからかわれていると思っただろう。