彼女の親の目線は“男性”の僕が稼いでいるかどうか

言うまでもなく、結婚とは家族の問題である。お付き合いと違い、客観的に納得のゆく理由を説明し、双方の家族に関係性を納得してもらうことが求められる。

親子丼。味噌汁のネギは彼女の希望。本人はネギは好きではない。(筆者撮影)

結婚を望む男性が、相手の両親に納得してもらうために必要なのは、「将来に見通しのつく職業に就いていること」。ひいては、「継続して稼ぐ経済力があること」。指輪しかり結納金しかり、とどのつまりお金の問題をクリアしなければならないのである。

育児に介護、突然のけが、病気、事故etc.お金のことをよく知らないヒモであっても、家庭を営んで行くことに莫大なお金がかかることくらいは何となく分かっているつもりではいる。

今はほそぼそとでも生活ができているかもしれない。しかし、定職に就いていなければいつ仕事がなくなるかも分からない。

筆者撮影
トマトカレー。付け合わせはズッキーニのオリーブオイル漬け。目玉焼きも彼女の希望。

僕が家事を担当し、彼女が働いたほうが生産性が上がるという認識を2人の間で持っていたとしても、親にとってみればそんなことはどうでもよい。「男の僕が外で働いているかどうか」こそ重要視されるからだ。

彼女が外で稼ぎ、僕が家事を担うスタイルは、ちょうど僕らの親世代が見聞きしてきた一般家庭像とかけ離れ過ぎている。どう想像したって娘が不幸になる未来ばかりが見えてしまい、納得はいかない。

例えば、マスオが買い物に出掛け、波平はフリーランス。サザエとフネが山川商事に勤務する。うーん。僕とて、やっぱり想像しにくい。

アニメに限った話でなく、「女性が外で稼ぎ男性が家を守る」前例が少なすぎる。そりゃ、ご両親の不安も納得だ。

従来の家庭像に沿い、安定した収入を得る男性と一緒になってもらうことこそ、娘が幸せになる最善策に思えてしまうことも無理はない。

両性の合意だけでは、後ろめたさが残ってしまうかもしれない

とは言え、慣習は慣習にすぎない。憲法では「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」するとされている。「親の目なんか気にせず、2人がいいなら結婚すればいいじゃん」と思われる方も多いだろう。

塩焼きそば。彼女が肉を好むため、隙あらば野菜を料理に入れる。(筆者撮影)

先述のとおり、煩わしいプロセスだって無視することもできる。だが、彼女も僕だけの彼女ではない。彼女が家族や友人などに対して後ろめたさを残すのであれば、それはそれで考えモノだ。

彼女がアンニュイな気持ちを持つようになれば、生活が楽しいモノでなくなってしまうだろう。両者が楽しくない毎日など僕としても不本意だ。

「なら定職につけ、お前の自業自得だ」と、言われてしまえばグゥの音もでない。だが、僕と彼女の性別が逆だったら話は変わってきたかもしれないし、彼女も要らぬことにヤキモキする必要もなかったかもしれない。

冒頭にも書いたとおり、僕も彼女もアラサーだ。彼女が子供を残したい希望を持ったとしても、不安は年齢を重ねるごとに募っていく。

もっと言えば、結婚をしなければ“なぜ”結婚をしないのか。結婚したらしたで、“なぜ”ヒモと結婚したのか。これから先、家庭を持たないことに関し、風当たりの強い質問が飛んでくるのは僕でなく、女性である彼女のほうが多いことも目に見えている。

筆者撮影
(左)回鍋肉。中華料理はゴマ油にネギ・生姜・ニンニクを馴染ませることから始めるそう。(右)複数人の女性を相手にヒモ生活をしてきたふみくん。ガスとヒーターではチャーハン作りのコツも違うそう。