「ラムダ株」でも水際対策で大失策

最悪のケースは、このまま感染爆発が収まらないところに、さらに変異株が上陸し、第6波の感染拡大が起きること。すでに南米由来の変異株「ラムダ株」が7月20日に国内で確認されていたことが分かっている。これは五輪関係者によって持ち込まれたが、驚くことに同じ飛行機に乗っていた濃厚接触の可能性がある人のリストを厚生労働省が自治体や五輪組織委員会に伝達するのを「忘れていた」ことが五輪終了後になって発覚した。ラムダ株は感染力がより強いとされるが、重症化リスクが高まるのか、ワクチンが効くのかといったことはまだ分かっていない。本来は国内への侵入を防ぐ「水際対策」を徹底するべきだったのだが、またしても水際対策で重大な失策を犯したことになる。

厚労省は「ミス」だとしているが、五輪が終わるまで意図的に隠していたのではないか、と疑念を抱く人も少なくない。政府への信頼は地に落ちている。

写真=iStock.com/elenaleonova
※写真はイメージです

経済活動の凍結は、経済弱者の生活を直撃する

第5波、第6波の感染爆発で、医療ひっ迫が深刻化し、医療現場で重症患者を救えずに死者が増加するようなことになれば、国の指示にかかわらず、国民は自主的に経済活動を止める事態に陥るだろう。そうした経済活動の凍結は、多くの経済弱者の生活を直撃することになりかねない。女性のパートや学生アルバイトなど非正規雇用が再び大きく減れば、生活が成り立たず、困窮する人たちが出てくることになる。

これまでの緊急事態宣言の繰り返しで、日本経済の回復は芳しくない。8月16日に速報が発表された4~6月期のGDP(国内総生産)は実質の季節調整値で年率1.3%の増加だった。昨年4~6月期に28.2%減と大幅に落ち込んだ後、7~9月期は22.8%増、10~12月期は11.9%増と回復基調に入ったが、今年1~3月期は緊急事態宣言の影響で再びマイナス3.7%転落した。4~6月期はかろうじてプラスだったが、個人消費の勢いは乏しい。このままだと、7~9月期は再度マイナスに転落する可能性も出てくる。