後続車に運転手が乗らない、無人隊列走行システムが実現する
隊列走行とはその名の通り、何台かのトラックが隊列を作って走行する。自動運転ではないため、先頭のトラックには従来どおり、運転手が乗って運転する。
ポイントは2台目以降である。先頭のトラックと後続するトラックを、電子連結技術を使って常時通信させるのだ。先頭車両の運転手の運転操作がリアルタイムで後続車両に伝えられ、ADASで車両を制御することで、すべての車両が一体的にコントロールされる。これがCACC(Cooperative Adaptive Cruise Control=協調型車間距離維持支援システム)と呼ばれる、自動運転技術を使った隊列走行である。
すでに実用化されているACC(Adaptive Cruise Control=追従型クルーズコントロール)では、後続車が自身のレーダーやカメラ、センサーで先行車との車間距離情報を取得し、車間距離制御を行う。その際、双方の車両間で通信は行わない。
これに対しCACCではACCでの車間距離制御に加え、先行車の運転に関する情報を車車間通信によって後続車が取得する。つまり、車車間通信を必須としているかどうかが両者の最大の違いである。
後続車に運転手が乗らない、究極の隊列走行は「無人隊列走行システム」と呼ばれる。後続車に運転手が乗る場合は「有人隊列走行システム」である。もし無人隊列走行が実現すれば、運転手不足対策として大いに役に立つことになる。
有人隊列走行の場合でも、後続車の運転手は、車線変更をする場合のハンドル操作と緊急時以外は運転操作に介入せずCACC任せにできるため、運転手の負担軽減に役に立つ。
無人隊列走行で期待される意外なメリット
それだけではない。数台のトラックを一体制御できることで、安全性の向上が期待される。
現状では交通事故のほとんどが何らかの人為的なミスによるものである。一体的に数台のトラックを制御することは、衝突事故の防止にもつながるのだ。
電子連結技術を使うことで、車間距離も変わってくる。通常は安全確保のため、高速道路では例えば時速80キロで走行するときは80メートル、100キロで走行するときは100メートルと、速度をメートルに置き換えた距離をとるよう推奨されている。しかしこのように車間距離を大きくとると、車体は空気抵抗を強く受けることになる。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のリポートによれば、大型車の高速走行では、エネルギー消費の4割以上が空気抵抗だといわれるほどだ。
しかし車両間の通信を行うCACCを使うことで、人間が前方の車両のブレーキランプを認識してブレーキを踏むときより、車間距離を大幅に短くすることが可能となる。すると後続車の空気抵抗が大幅に減って、かなりの燃費改善効果と、排気ガスが環境に与える負荷の削減が期待されるのだ。各種先行研究によれば、車間距離10メートルで約10%、4メートルで約15%、2メートルでは約25%も燃費が改善されると推定されている。