39歳でギャルの聖地、SHIBUYA109へ

109が若い世代に人気のファッションビルだということはもちろん知っていました。

しかし実際どんなものなのか雑誌を買って読んでみると、よく知っている昔の109とは全く様変わりしていることがわかりました。

私は率直に「面白そう!」と思ったのです。

渋谷の109(マルキュー)といえば、ある世代以上の方にとってはガングロ・ルーズソックスの象徴的存在ではないでしょうか。その頃は一世を風靡した、いわゆる“ギャルファッション”ブームは落ち着いていました。しかし相変わらず流行を発信していて、若い世代のファッションを牽引する存在だったと思います。

写真=iStock.com/SmokedSalmon
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05年に始まったファッションショーのイベント『東京ガールズコレクション』では、109からも多くの人気ショップが参加していたようです。ファッションの傾向としてはモノトーンベースで比較的シックなものやガーリーなスタイルが人気を集めていました。相変わらず人気ショップで働くカリスマ店員さんは、テレビや雑誌など、メディアでも注目の存在でした。

「そんな華やかな場所にアラフォーのおばさんが仲間に入れてもらえるのかな? できるのかな?」と思うと同時に、ワクワクする気持ちもありました。渋谷は学生時代毎日通った、いわば私にとってホームのような街です。109もアウェイではなく、違和感なく通えそうだなと思ったのです。

全く足を踏み入れたことがないファッションの世界でしたが、頭よりも身体を使って働く方が絶対楽しそうだと思いました。決めたら迷いなんてありません。同級生のお誘いに「ぜひ働かせて!」と応えることにしたのです。

働く決め手は自由なファッションへの憧れ

政治家の妻だったので、ファッションではそれほど冒険ができませんでした。後援者の皆様が不快に思わないトラッドなスタイルを夫も好んでいました。基本はスカート。私の好みは二の次でした。思い返せば高校時代、同級生たちは髪を外巻きにしてサーファースタイルで装うなか、私は1人で髪をツーブロックにしてモノクロファッションという感じ。周囲とはちょっと違った自分の好きな傾向が確実にあったのに……。

雑誌で見た109ファッションの若いお嬢さん方は、髪の色も形も、ネイルまでが色とりどりに彩られ、とても自由できれいでした。ファッションの聖地109にワクワクしたのです。

もしガングロのヤマンバファッションが全盛の頃だったら、私の感覚では理解できず、109にしり込みしたかもしれません。

私が働くことになったアパレルショップは109の6階に位置する10坪ほどの『MANA』という店舗です。友人のお母様であるオーナーからは「あなたが後継者になるのだから頑張ってください。まずは店長ということで、お店のことはお任せするわ」と言われていました。身内の方に跡を継がせようと任せてみたけれど上手くいかなかったので、代わりに私にやらせてみよう、ということのようでした。

そんな経緯でしたので、結果を出せば自分がこのままこの店を運営していけるのだと思い、良い店を目指して頑張って働きました。ありがたいことに売上のノルマや成長目標といったものはなく、自由にやらせてもらえました。