コロナ禍の長期化を目の当たりにし、離婚や別居を決意した妻たちがいる。ステイホームが始まって1年以上が経過した今、なぜ彼女たちは決断を下したのか。夫婦関係研究家の岡野あつこさんが解説する――。
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「さすがにもう限界」「これ以上、無理」

長引く新型コロナウイルスの感染拡大で、夫婦生活にもさまざまな新たなトラブルが生じている。最近目立つのは、長期化するステイホームにより蓄積された夫婦間のストレスが、今ごろになって爆発するケースだ。

ステイホーム生活がスタートした当初は、慣れない新生活のスタイルに夫婦がお互いに気を遣い合うことで、「コロナ離婚」という選択をせずに済んだ夫婦も多いはず。ところが、コロナ禍という長いトンネルの出口が見えそうにない今、「さすがにもう限界」「これ以上、無理」などと夫婦関係に危機を感じる相談もジワジワと増加している。

たとえば、長期化するコロナ禍で、現在の夫婦生活に区切りをつけるべきかどうか、今まさに迷っている妻たちの言い分を見てみよう。

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「人生の再スタートを切るなら、今がチャンスかもしれない」

【CASE1】家庭でも職場でも主従関係を強いるモラハラ夫

Rさん(29歳)は、25歳の時に11歳年上の今の夫と出会い、結婚。年齢が離れていたことに加え、経営者という立場もあったせいか「同世代の男性に比べ、頼もしく思えた」と話す。

結婚後、2人の生活の主導権を握っていたのは、完全に夫だった。「家事は一切やらないくせに、うるさいくらい口は出す」という夫は、ことあるごとにRさんの言動にダメ出しをし、「お前は社会のことを何も知らない」「オレが教育してやっているようなものだな」と得意になっていたとのこと。Rさんは夫に叱責されるたびに傷つき、夫と会話をするのが怖くなるほど萎縮していった。

子供ができないまま3年たった頃、Rさんは「このままずっと主人に仕え、自分らしく暮らすことのできない人生でいいのだろうか?」と考えるようになったという。

コロナの影響で夫が自宅で仕事をするようになると、Rさんの夫に対する愛情は急激に冷めていった。「リモートワークで夫の仕事ぶりを間近で見るようになり、愕然としました。スタッフには人としての尊厳を奪う言葉で常に怒鳴り散らし、イジメに近いほど理不尽な要求をつきつけるのも日常茶飯事。思い通りにならない会社の経営で生じるストレスを、私だけでなく従業員にまでぶつけていたと知り、夫の器の小ささが情けなくなった」。

Rさんは近々、将来のことについて夫婦間での話し合いを持つという。「将来子どもがほしいこともあり、人生の再スタートを切るなら、今がチャンスかもしれないと考えている。離婚も覚悟のうえで話し合いを進めたい」