例えば商品の生産過程や発注数量などの情報は、「MD」と呼ばれる担当者の頭の中だけにあった。そのため情報が社内で共有されず、本人が退職すればゼロから業務設計を始めなければならない。

また、過度な発注などが行われていても、本人以外に誰もそれをマネジメントできない。仕組み不在の個人プレーによる弊害が、急成長の陰で徐々に広がっていたのである。

松井社長はそうした業務をひとつずつ見える化し、仕組み化してドキュメントに落とし込んでいった。情報やスキルの共有化を進めたのである。それによって仕事のムダやムラの発生が大幅に抑えられ、収益構造の改善につながった。

「MUJIGRAM」も、店舗における業務スキルの共有化、さらには標準化を目的に作成された。業績回復後の03年にまず「業務基準書」が作成され、その後必要に応じてジャンルを広げていった。そして現在の13分冊になったのは昨年のことである。


全業務の仕組み化で収益構造を改善

その内容は「新人でもわかる記述」をキーポイントに構成されている。図や写真、書類の記入例なども詳しく載っており、1項目あたりのページ数が一般的なマニュアルに比べて多い。1683ページもの分量になったのはそのためだ。

仕組み化やマニュアル化は、感性重視によって成長を果たした無印良品に相応しいものではないとの見方がある。しかし、高感性なビジネスをより効果的に展開するためには、それを下支えする仕組みや作業の標準化がどうしても必要になってくる。まさしく「1683」という数字は、無印良品の改革を支える「仕組み」の堅固さを物語っているものといえよう。

(坂本道浩=撮影)
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