SNSとの相性の良さが追い風になっている

それまで女性の間で、スニーカーがそこまで大きなムーブメントとなる事例はなかった。そして成熟しきっていないマーケットほど、基本的に流行のモデルに「右へ倣え」の精神で皆が飛びつきがちだ。何より女性は男性以上に共感が重要とされる。みんなが同じ方向を目指しやすいし、その分トレンドを作りやすく、メディアも特集を組みやすいためムーブメントを増幅しやすいのが、特徴とも言える。

そしてSNSとの相性の良さも追い風になっている。ガイアックスソーシャルメディアラボが2020年3月に更新したSNSの最新動向データによれば、成長率が鈍化しているツイッターやフェイスブックは男性利用者の割合が高い一方、インスタグラムに関しては、20~30代に限ってみると、女性利用者の割合が60%を超えている。文字を読むよりも写真を見て情報を得るインスタグラムは女性向きで、スニーカーの物欲を高める有効なツールなのかもしれない。

2015年以降、定番モデルブームはさらに勢いを増した。

小澤匡行『1995年のエア マックス』(中公新書ラクレ)

アディダス オリジナルスの「スーパースター」、そしてヴァンズの「オールドスクール」が大ヒット。それまでのミニマム志向から一転、少しデザイン性があり、音楽やスケートカルチャーによって育まれたモデルが受け入れられたことで選択肢が広がった。

ブランドデータバンクによる「あなたが持っていてお気に入りの靴・シューズ」という調査結果を見ると、2013年の女性のスニーカー着用率が23.4%だったのに対し、翌年には41%まで増加。これは初期のブームに比べて、およそ倍の人口がスニーカーを履いたことを意味しており、女性の間でもすっかり市民権を得たとも言えそうだ。ちなみにこの間、男性は60.1%から63.5%へと微増したに過ぎない。そう考えると、まだまだウィメンズの伸びしろは計り知れない。

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