対日姿勢を変化させつつある

景気回復が文大統領の支持率に与える影響は大きい。年初来、不動産価格の高騰や、土地住宅公社の職員による不正投機の疑惑浮上、感染増加などによって文氏の支持率は低下した。世論調査の一つによると、4月下旬の支持率は過去最低の29%を記録した。

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その後、支持率は不安定な動きを伴いつつも持ち直した。6月7日に公表された世論調査で支持率は38.3%だった。経済の側面から支持率を考えると、輸出などの増加によって景況感が改善したことは大きいだろう。

文氏は景気回復の勢いを強め、支持率を高めたいだろう。韓国の対日貿易収支が赤字であることから確認できるように、基本的に韓国経済にとって、対日関係は重要だ。文氏は景気回復を実現して支持率の回復を目指すために、対日姿勢を変化させつつある。それがソウル中央地裁の判断に与えた影響は軽視できないだろう。

日米台の連携を意識せざるを得ない

世界経済全体の観点から考えた場合にも、韓国経済にとってわが国との関係の重要性は高まっている。その代表的な分野が半導体だ。

米バイデン政権は中国との競合に備えて、自国を中心とする最先端の半導体などの供給網の整備を重視しているようだ。それが、米国が台湾を重視する理由の一つだろう。台湾には、最先端の半導体生産技術を持つ台湾積体電路製造(TSMC)の本拠地がある。

茨城県つくば市にて、TSMCは本邦企業と半導体の後工程技術に関する研究・開発を行う。TSMCは半導体の部材や製造装置の調達などに関して、わが国企業との関係を一段と重視し始めたと考えられる。最先端の半導体の安定供給という共通の目的の下、日米台の連携は一層強化される可能性がある。

それに加えて、英国は最新鋭の空母“クイーン・エリザベス”を極東に派遣し、独仏蘭もフリゲート艦などをインド太平洋地域に派遣する。その背景にも、米国と連携して中国の海洋進出を抑え、日台を含む極東地域の安定を目指すことが、世界経済への安定かつ持続的な半導体供給に必要との認識があるだろう。