「労使が話し合って労働者の不利益を回避せよ」厚労省のお達しも無視

実際に首都圏青年ユニオンが発表した「シフト制労働黒書」(2021年5月)にはそうした企業の事例が多数紹介されている。

たとえば約20店舗のレストランを経営する企業のレストランの1つで働くアルバイトの2人はコロナ前まで週40時間超働いていた。週5日勤務として、1日平均8時間働いていることになる。

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2020年4月の緊急事態宣言後、勤務していた店舗が休業、同年5月半ば以降に再開されたが、正社員のみで切り盛りするのでアルバイトは出勤できず、同年6月以降はアルバイトの勤務が再開されたが、労働時間は大幅に削減された。

休業やシフト削減はしかたがないにしても4月以降の店舗休業期間や労働時間の削減分についてシフト勤務のアルバイトには休業手当が一切出なかった。

アルバイトの2人は労働組合に加盟し、会社と団体交渉を行ったが会社側は「シフトが決まっていない期間は予定している労働があるとはいえず休業とは認められない」として、休業手当の支払いを拒否したという。

本来であれば、労働契約書の記載内容に関係なく、コロナ前の勤務実態と比較して労働時間が減っていれば、その分の休業手当を支払うべきだろう。

仮に法律上の支払い義務がないにしても厚生労働省のQ&Aでは繰り返し「労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力すること」を求めている。

しかも支払い義務がないにしても、前述したように休業手当を支払えば、企業は雇調金を受け取れることを厚労省のQ&Aでも示している。にもかかわらず休業手当を支払わないのは明らかに非正規社員イジメというしかない。