なぜ下痢が起きやすいのか

新型コロナ感染症による下痢、これに伴う腹痛や嘔吐などの症例が数多く報告されています。新型コロナに感染すると、なぜ下痢などの症状が起こるのでしょうか。

新型コロナウイルスは、体内の細胞への侵入経路としてACE2(アンジオテンシン変換酵素2)という酵素と、TMPRSS2(Ⅱ型膜貫通型セリンプロテアーゼ)という酵素を使っています。新型コロナウイルスは複数の突起を持つ球状の形をしていて、この突起がACE2受容体と結合して、細胞内に侵入します。

受容体とは、体の内外からの刺激を情報に変換して利用するための器官です。TMPRSS2も受容体のように働きます。ACE2とTMPRSS2は、肺や小腸上皮に多く発現しており、ACE2は上部食道、肝臓、大腸にも多く発現しています。そのため、新型コロナウイルスは腸や食道などの消化器に侵入しやすく、下痢、腹痛、嘔吐、さらには食欲不振などの症状を引き起こすのです。

なお、便中の新型コロナウイルスは鼻咽頭よりも長く検出されたとの報告もあります。トイレに行ったときには、手洗い・消毒を徹底しましょう。

「子供にはあまり感染しない」のウソ

新型コロナウイルスは、子供にはあまり感染しない、感染しても無症状か軽症で済むことが多いといわれていました。しかし、実態は違うことがわかってきました。

中国疾病管理予防センターに報告された論文によると、子供2143人(確定例731人・疑診例1412人、中央値7歳)を調べたところ、90%以上が無症状~中等症でしたが、そのうち無症状は4.4%、軽症は50.9%でした。

写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

みなさんは、軽症が半数ほどと聞いて、思ったより少ないと感じたのではないでしょうか。無症状・軽症の症例を除くと、中等症以上の症例も少なくないことがわかります。ちなみに、軽症の症状として同論文では、発熱、鼻水、咳、倦怠感、筋肉痛、嘔吐、下痢などを挙げています。風邪のような症状ですが、子を持つ親としては心配でしょう。

最近、新型コロナウイルスの変異株が海外から持ち込まれ、大きな問題になっています。特にイギリス由来の変異株は、子供にも感染しやすい構造になっているので、気をつける必要があります。今後、子供への感染の広がりが懸念されます。